2015 Fiscal Year Research-status Report
イオン注入法を利用した窒素含有カーボンアロイ合成に関する研究
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15K04736
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
出崎 亮 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究員 (10370355)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 窒素含有カーボンアロイ / イオン注入 / 有機―無機転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度においては、イオン注入に適したカーボン前駆体高分子の選定を目的として、分子構造中にベンゼン環を含むポリイミド、分子構造中にベンゼン環を含まないキチンを選択し、これらの不活性雰囲気中1000℃までの温度域における重量変化測定、X線回折測定等を行なった。その結果、ポリイミド、キチンについてそれぞれ520℃、270℃以上で急激な重量減少が起こり、1000℃における炭素収率(重量残存率)は48%、13%となった。1000℃焼成後のX線回折パターンから、ポリイミドの場合、黒鉛に由来するピークがほとんど認められず非晶質カーボン組成であったのに対し、キチンの場合、黒鉛結晶の成長が認められた。 以上の結果から、炭素収率の面からはベンゼン環を含むカーボン前駆体高分子が有利であるが、黒鉛骨格成長の面からは必ずしもベンゼン環を含むカーボン前駆体高分子が有利ではないことが示唆された。窒素含有カーボンアロイを合成する上で、黒鉛骨格が成長しやすいカーボン前駆体高分子が原料として有利であると考えられ、今後、ベンゼン環を含まない高分子について主に検討する。 一方、分子モデリングソフトウェア(SPARTAN ’14、Wavefunction製)を用いて、窒素を含有する様々な炭素骨格に関する赤外分光スペクトルを作成し、データを整理した。今後、これらの予測スペクトルを参考に、実際に窒素イオン注入を施したカーボン前駆体高分子の赤外分光スペクトルを収集し、窒素周辺の化学構造を同定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は当初の計画通り順調に進んでいる。平成28年度においては、カーボン前駆体高分子への窒素イオン注入実験を予定している。そのため、量子科学技術研究開発機構 高崎量子応用研究所の400keVイオン注入装置のマシンタイム申請を行ない、平成28年8月までに3日間のマシンタイムを確保した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度においては、カーボン前駆体高分子にエネルギーと照射量を変化させて窒素イオン注入を行い、カーボン前駆体高分子の化学構造変化をX線光電子分光(XPS)分析装置等により分析し、平成27年度に作成・整理した予測スペクトルと比較することによって窒素イオン注入によってカーボン前駆体高分子中に優先的に生成する窒素―炭素結合の化学状態の違いを明らかにする。 また、窒素イオン注入後のカーボン前駆体高分子について、1000℃までの温度で熱処理後のXPS分析、赤外分光分析等により、焼成過程におけるカーボン前駆体高分子の化学構造変化に及ぼす窒素イオン注入の影響を明らかにする。この結果を基に、酸素還元活性を発現する化学構造の予測スペクトルと同様の実測スペクトルを与えるカーボン前駆体高分子、イオン注入条件(エネルギー、照射量)、焼成条件(温度、雰囲気)を明らかにする。
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Causes of Carryover |
実験消耗品としてイオン注入実験用サンプルホルダの購入を計画していたが、平成27年度はその仕様決定に留まったため。また、日程上の都合により、計画していた日本セラミックス協会での研究成果発表が困難となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
イオン注入実験用サンプルホルダ、各種測定分析装置用消耗品、有機溶剤等の試薬を購入するとともに、International Congress on Ceramics (ICC6)、日本セラミックス協会等の会議における研究成果発表のための旅費および参加費として予算を執行する計画である。
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