2015 Fiscal Year Research-status Report
可変倍率のX線ブラッグ光学系による放射光イメージングの高度化
Project/Area Number |
15K04745
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
平野 馨一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (40218798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 由美子 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究員 (70339258)
杉山 弘 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (80222058)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | X線 / 放射光 / イメージング / X線光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験室X線源よりも遥かに高い輝度を持つ放射光は、物質内部を高速に非破壊観察するためのプローブとして、材料科学、生物学、医学等の分野で今日広く利用されている。この放射光X線イメージングのさらなる高度化を図るために、倍率可変のX線ブラッグ光学系の開発に取り組んだ。 今年度は第一に、倍率可変X線ブラッグ光学系用の光学素子を作成した。光学素子には完全性の高い結晶が必要なため、FZ法で作成されたシリコン結晶から素子を切り出し、結晶表面の切削歪みや欠陥をエッチングで取り除いた後、結晶表面に無歪鏡面研磨を施した。 第二に、倍率可変X線ブラッグ光学系の評価実験を放射光実験施設Photon FactoryのビームラインBL-14Bで行い、x1~x10の範囲で倍率を変化させつつ、試料像の撮影を行った。 第三に、撮影した試料像の歪みを補正するプログラムを作成し、それが正常に動作することを確認した。 第四に、フォトン・カウンティングX線二次元検出器であるPilatus 100K-S(Dectris製、ピクセルサイズ173ミクロン角)と倍率可変X線ブラッグ光学系とを組み合わせて、その性能評価を行った。その結果、空間分解能を28~280ミクロンの範囲で連続的に制御できることが実証された。 得られた研究成果は論文にまとめて出版した(K. Hirano et al.: J. Synchrotron Rad. 22 (2015) 956-960.)。また、国際会議(The 12th International Conference on Synchrotron Radiation Instrumentation @ New York)で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の第一の目標は、倍率可変X線ブラッグ光学系用の光学素子を作成することだったが、予定通り素子の作成と評価を行うことができた。 第二の目標は、倍率可変X線ブラッグ光学系用の実験装置を設計・製作することだったが、これもほぼ予定通り行うことができた。 第三の目標は、倍率可変X線ブラッグ素子の光学伝達関数を計算するプログラムを作成することだったが、試料像の歪み補正を行える段階までプログラムの作成を進めることができた。しかしまだ完成には至っておらず、完成に向けて努力中である。 なお、今年度は実験をほとんど予定していなかったが、Photon Factoryで数回実験を行って、倍率可変X線ブラッグ光学系の性能評価を行った。 以上を踏まえて全体的に判断すると、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今のところ、研究はおおむね順調に進展しているので、引き続き当初の予定に従って研究を進める。 次年度は、さらに倍率を上げて(x1~x100程度)、倍率可変X線ブラッグ光学系の特性評価を行う。実験は放射光実験施設 Photon Factory のビームラインBL-14Bで行う。さらに、実験で得られた結果を計算結果と比較することにより、計算プログラムの妥当性について検証する。理論計算が実験結果と合わない場合、計算プログラムの見直しや修正を行う。 最終年度は主に倍率可変X線ブラッグ光学系の応用を行う。まずは、倍率可変X線ブラッグ光学系を吸収型X線トモグラフィーに応用して、各種試料の非破壊三次元観察を行う。次に、位相型X線イメージングの一種である、回折強調撮像法(DEI)への応用を行う。 なお、得られた研究成果は随時論文にまとめて出版する。また、国内及び国外の学会で発表を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していた実験装置の一部の設計が年度内に間に合わなかったため、次年度に延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験装置の設計を速やかに行って、今年度の未使用分を執行する。
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Research Products
(5 results)