2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04771
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
後藤 泰宏 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40312425)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 形式群 / 数論幾何 / カラビ・ヤウ多様体 / ミラー対称性 / デルサルト型多様体 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,3次元カラビ・ヤウ多様体を正標数の体上で考え,その数論的性質を多様体の変形理論と形式群を通して調べることである。考察する3次元多様体は,Borcea-Voisin型多様体とその一般化,並びに,3次元(重さ付き)デルサルト型多様体とその変形などである。研究の方法としては,まず,上記の多様体を用いて形式群のデータを集める。次に,正標数の変形理論を通して形式群と自己同型群等との関係を探る。そして最終的には,形式群とミラー対称性の関係性について考察するというものである。研究計画初年度の平成27年度は,具体的なカラビ・ヤウ多様体を用いて形式群のデータを集めることを目標とした。研究協力者の由井典子氏(カナダ・クイーンズ大学教授)と2回の打ち合わせを行い,中国海南省で開かれた国際研究集会で成果発表を行うなどにより,次の3つの成果を得た。 (1) 形式群の高さを計算し,現れる値の頻度や傾向を探った。具体的には,Borcea-Voisin型多様体とその一般化,及び3次元デルサルト型多様体の形式群を計算し,これまでに知られていなかった高さのデータを集めるとともに,多様体のホッジ数と形式群の高さの関係について調べた。 (2) 多様体の幾何的性質と形式群の高さの関係性を調べ,多様体上の例外因子の数を用いて高さの評価を行った。 (3) 3次元カラビ・ヤウ多様体の形式群に関する既知の理論の調査を始めた。この調査は28年度から本格的に行う理論的研究のための準備である。 なお,27年度は計算ソフト「Magma」のライセンス契約を更新する予定であったが,当該ソフトのWindows版が更新されなくなったため,ライセンス更新を一時中断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は形式群のデータを集めることを目標とし,具体的には次の3つの目標を立てていた。(1) 形式群の高さを計算し,現れる値の頻度や傾向を探ること,(2) 多様体の幾何的性質と形式群の高さとの関係性を調べること, (3) 3次元カラビ・ヤウ多様体の形式群に関する既知の理論の再吟味を開始することである。 (1)については,Borcea-Voisin型多様体とその一般化,及び3次元重さ付きデルサルト型多様体の形式群について高さを計算することができた。デルサルト型多様体を変形したものについてはまだ形式群の計算が完了していないが,変形を加えていないものだけでも,形式群の高さに関して数多くの新しいデータを得ることができた。それゆえ,当初の目的は概ね達成した。(2)については,形式群の高さとカラビ・ヤウ多様体の自己同型群や特異点の情報との関係を探ることが目的であった。これについては,形式群の高さと特異点の情報との関係を得ることができたので,目的はある程度達成できたと言える。(3)は28年度から本格的に行う研究の準備であるため,特に具体的な目標は設定していなかった。しかしながら,研究協力者である由井氏との共著図書の執筆を進める中で,van der Geer氏と桂氏の結果のまとめ直しなどを通して正標数の変形理論の再吟味に着手できた。 以上のことから,27年度は,当初の目的を概ね達成できたと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の計画通りに研究を進める予定である。平成28年度は,27年度に着手した「3次元カラビ・ヤウ多様体の形式群に関する既知の理論の再吟味」という課題に引き続き取り組み,正標数の変形理論を新しい観点から考察する。それと同時に,(27年度に完成できなかった)形式群と多様体の自己同型群との関係の定式化や,デルサルト型多様体を変形した多様体の形式群の高さの計算を引き続き試みる。28年度は理論面での考察が中心となるが,27年度に得た結果を参考にしつつ,カラビ・ヤウ多様体の変形に係る形式群以外の観点を探っていく。3次元カラビ・ヤウ多様体の形式群の高さが第(1,2)ホッジ数に関係していることから,ミラー対称性との類似を目指す意味で第(1,1)ホッジ数に焦点を当てて多様体の新たな不変量を調べる。さらに,計算機を用いて形式群の高さを数値的にも計算し,多様体の幾何学的性質と形式群との関係を探る際のヒントとする。 研究協力者の由井氏とは,28年度もメールによって定期的に連絡を取り合い,形式群に関する助言を求める。由井氏との集中的な打ち合わせは2回(東京とカナダ)を予定している。特に,28年度はカナダのバンフ国際研究ステーションにおいて,カラビ・ヤウ多様体の数論,幾何,物理に係る研究集会が開かれる。そこに由井氏とともに出席することが確定しており,研究集会を通して研究の大幅な進展を図りたい。 そして平成29年度は,形式群とミラー対称性との関係について考察する。形式群におけるミラー対称性の類似を得ることが目標なので,まずは,ミラー対称性をもつことが分かっている3次元カラビ・ヤウ多様体に焦点を当てて形式群の特徴を探りたい。
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Causes of Carryover |
次年度には27,460円が繰り越されることになった。その主な要因は、計算ソフトMagmaのライセンス更新が不要であったことと、謝金を伴う研究依頼の必要がなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記繰越金については、計算ソフトMagmaのライセンス更新か、謝金を伴う計算プログラミングの補助に充てたい。すでに配分予定の次年度研究費については、当初の予定通り使用する計画である。
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Research Products
(4 results)