2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04776
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
越谷 重夫 千葉大学, 大学院理学研究科, 教授 (30125926)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 表現論 / ブルエ予想 / 導来同値 / アルペリン重み予想 / 自明自己準同型加群 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は3編の論文が出版された。有限群の表現論、特にモジュラー表現論では、考えている基礎体の素数標数が重要な役割を果たす。素数のうち最も重要なものは言うまでもなく2である。また、有限群の2モジュラー表現論を考える場合には、有限群のシロー2部分群の構造と非常に重要である。最初の論文ではこの場合を扱った。より具体的に言うと、自明自己準同型加群全体がなす群の構造を決定した。これは研究課題である「ブルエ予想」と密接に関連していて、今までにも、ブルエ予想の一部解決に役立っている。これは、C.Lassueur との共著論文であった。その後、前年度からの研究の続きとして、B.Spaeth との共著の論文が2編出版された。どちらも、ブルエ予想の周辺研究で非常に重要な「アルペリンとマッカイ予想」および「アルペリン重み予想」と呼ばれる2つの予想を解くのに重要な一歩となるものである。2編とも、ブロックの不足群が巡回群の場合について考察を行った。 今回の研究で得られたいくつかの新しい研究成果を、海外でのいくつかの研究集会で発表した。スイス連邦工科大学ローザンヌ校で、9月1週目と2週目の2回、招待講演を行った。特に二つ目の発表の際には、御本尊のM.ブルエ自身も聴衆にいた。その他、ブルエ予想に非常に重要な貢献をして来た J.Chuang, R.Kessar, M.Linckelmann 等も聴衆にいて、講演以外の時間にも、ブルエ予想、アルペリン予想等に関して、非常に多くの議論ができ、大変有意義であった。また、ドイツ・イェーナ大学でのセミナーでも上記の結果を発表した。そして2月には京都大学数理解析研究所で、やはり上記の結果の一つについて招待講演を行った。 3月にはイタリア・ミラノビコッカ大学の T.Weigel を招聘し、Alperin-McKay予想 に関する共同研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
この年度は、論文が3編出版され、そしてスイス、ドイツおよび京都大学で合計4回の招待講演を行った。講演の際には、そこに出席していたブルエ御本尊はもとより、「ブルエ予想」およびその周辺の、非常に重要な予想である「アルペリン重み予想」、「アルペリン・マッカイ予想」などの専門家たちと貴重な議論ができた。スイス連邦工科大学ローザンヌ校に計3回、合計9週間滞在したことに因る。これらの研究打ち合わせ、研究討論だけでは無く、3人の研究者たちとの、それぞれ別の3つの共同研究が開始されたことなどは、当初予想していなかったことである。
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Strategy for Future Research Activity |
まず本題の「ブルエ予想」に関して述べる。上記で素数2が一番大事と述べたが、その次の素数3もこれまた負けずに重要な役割を果たしている。私は功刀直子との共著論文(2002年)で、シロー3部分群が位数9の基本可換群の場合のブルエ予想を完全に解いたが、「シロー3部分群が可換」という非常に一般的な場合が、既に我々には射程距離内に入っている。単純群の分類定理を使うと、最後の関門は、散在型単純群の一つである「オナン群」の主3ブロックである。これに関して、私は共同研究者 J.Mueller と2003年ころから研究し続けていたのであるが、ある地点で非常な困難に出会い、頓挫している。しかし、つい最近、ブルエ予想に関しての非常に若い研究者 D.Craven から共同研究の申し出があり、3人共同で再度これに挑むことになった。これが完成した暁には、ブルエ予想解決への画期的な進展になることは間違いないので、今後はこれに集中したい。
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Causes of Carryover |
当年度は、予定していた以上に海外の研究者との共同研究が進んだため、当初に予定していた以上に、海外渡航をすることが必要となった。そして、スイス連邦工科大学ローザンヌ校への滞在を、より長くすることが必要であったからである。また、12月に急遽決まった、イタリアから共同研究者の招聘が、年度末3月にあったこともその原因の一つである。 更に、今回の課題に関する研究が予想以上に順調に進んだこともあり、研究結果報告および研究自体を促進させるためにも、コンピュータが必要となり、これを購入したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度にも、幾つかの国際共同研究が継続される。ドイツおよびイタリア等ヨーロッパ訪問を予定している。ただ、今年度までの2年間で、かなり研究が進展したので、少しだけ減速することは可能なので、29年度使用予定額を28年度に少し移した。これが研究のまとめに影響することは、全く無い。また、国内の研究集会で3件ほどの招待講演をすることが決まっているが、国内出張であるので、金額的にも小さく、これも問題がない。平成29年度研究進展に悪い影響が与えられることは無い。
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