2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K04783
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
岡崎 武生 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (80437334)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Modular forms / L-function / New form / Modular variety |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルキメデス体上の4次の一般シンプレクティック群GSp(4)の既約許容 generic 表現πにおける新形式理論を構築した. これは, Brooks Roberts氏とRalf Schmidt氏により2007年にSpringer Lecture note seriesで公表されたπが自明な中心指標をもつ場合(即ちPGSp(4)の表現)における新形式理論の一般化である. Generic表現とは, 表現空間をWhittaker関数のなす空間に持つ表現のことだが, Novodovorskyにより関数等式をもつことが1970年代にアナウンスされている. 新形式理論とは, 自然数nでインデックス付けられた適当な算術群K(n)で不変となる表現空間の部分空間V(n)たちでフィルトレーションを構成し, nが関数等式に現れるイプシロン因子の位数Nと一致するとき, V(N)が1次元となり, V(N)に含まれる唯一のWhittaker関数(新形式と呼ぶ)がπのL-関数をもつといったものである. PGSp(4)の場合は, K(n)がパラモジュラー群と呼ばれる保型形式論やアーベル多様体論では広く知られる算術群であったが, 今回得たGSp(4)の場合は, パラモジュラー群より小さな群であり擬パラモジュラー群と名付けた. また, πがカスピダルなときは, Whittaker関数に高さの概念を導入することで, K(n)に関する複雑なHecke環の構造を調べることをスキップし, 証明の大幅な簡略化に成功した. 非カスピダル(誘導表現)の場合も多くの場合で簡略化に成功し, テータリフトにより具体的に新形式を構成している. 志村理論では, モジュラー曲線が2次の一般線形群GL(2) (GSp(2)と同型)の算術群で定義されているが, 擬パラモジュラー群も同じような役割を果たすことが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1970年代にJacquet氏による非アルキメデス体上のn次の一般線形群GL(n)のgeneric許容表現の新形式理論以来, 4次の一般シンプレクティック群PGSp(4)既約許容 generic 表現の新形式理論が, Brooks Roberts氏とRalf Schmidt氏により2007年に公表され, SO(n+1,n)のカスピダル表現に新形式理論がにより構築されている. PGSp(4)は, 符号数(3,2)の特殊直交群SO(3,2)と同型なので, SO(n+1,n)の新形式理論は, PGSp(4)の理論の拡張と考えられる. しかし, これらの理論はJacquet氏らのGL(n)での理論に比べ複雑に感じられ, また, 非カスピダル 表現の場合は理論が構築されておらず, 中心指標が自明な場合にかぎられているものである. これらの制限や困難さの理由をさぐり, それらを解消する為に, 今年度はGSp(4)の場合に研究をすすめたのだが, この場合は, 研究成果でのべたとおり, 概ね成功しているようである. また, フェルマー4次曲面の接錐と呼ばれる複素3次元カラビ・ヤウ多様体(CY3)の数論的性質について山内卓也氏との共同研究した論文が, Advance in Theoretical mathematics and Physicsに採用された. 物理学において、量子レベルで物質と重力を記述する唯一の理論として期待される超弦理論によれば、我々の住む4次元時空における運動方程式は, 10次元超空間からCY3がコンパクト化されて得られると予見されているので, 理論物理学界でCY3が興味を持たれている.
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Strategy for Future Research Activity |
Novodovorskyにより, GSp(4)の既約許容 generic 表現πが関数等式をもつことが1970年代にアナウンスされていたのだが, これは, 証明が付されていなかった. この関数等式は, πの中心指標が自明な場合Brooks Roberts氏とRalf Schmidt氏により2007年に修正されて, 証明された. 中心指標が非自明な場合も修正が必要であり, Roberts-Schmidt氏の純解析的手法を模倣することでそれは可能であるのだが, シンプルなものではない. 一方, Novodovorsky氏, Piatetski-Shapiro氏の理論は, Gelfand氏とKazudan氏による, GL(n)許容表現への代数幾何学的手法をGSp(4)へ適用したものであり, 私は現在細部を確認中であるが, 証明に不備が多いようで, followし難いように感じる. しかし代数幾何学的手法が, (適用可能であるならば) 非常に強力で一般性があるのは確かなので, 今後の研究のためにも, なんとかNovodovorsky氏の代数幾何的手法を修正して, 関数等式を与えたい. また, πがカスピダルな場合は, シンプルな新形式理論を与えたが, 非カスピダルな場合は, 技術的な議論を要した. 一方, Jacquet氏達のGL(n)表現の新形式理論は, 近年, 非カスピダルな場合の証明が誤っていた事が確認され, Jacquet氏により代数幾何的手法を用いて, 修正された. これは非常にシンプルなものであったので, この手法をGSp(4)などの一般的な代数群にたいしても適用できないか検討したい.
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Research Products
(2 results)