2016 Fiscal Year Research-status Report
ゼータ正規化積の視点から見たグラフ上の調和解析とその極限操作
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15K04785
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山崎 義徳 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (00533035)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ラマヌジャングラフ / ラプラシアン / 素測地線定理 / グラフの熱核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず昨年度残された課題であった一般四元数群に対する Ramanujan Cayley グラフに関する研究を完成させた。簡単に内容を述べると、一般四元数群に対する Cayley グラフで完全グラフに近いグラフがどこまで Ramanujan グラフであるかという問題を考え、その境界を解析数論の古典的な問題である Hardy-Littlewood 予想を用いてある意味で特徴づけた。これは論文にして投稿し、下記査読付き報告集に掲載予定である。 また、昨年度得た離散トーラスの素測地線定理に関して、整数格子上の熱核の理論を用いることで、この定理が離散トーラスの素測地線に関するより精密・詳細な情報を与えていることを確認した。さらに、上記の議論を、Hecke 群と呼ばれる無限群上の Cayley グラフに対して展開した。具体的には、その熱核が満たす微分・差分方程式を明示的に書き下し、そこからわかる対称性などについて調べた。Hecke 群は特別な場合に数論における重要な対象である modular 群を含んでいるので、これは今後 Ramanujan グラフなど様々な研究への応用が期待できる。一方で別の一般化として、上記の議論を一般のグラフ束に対して展開した。具体的には、グラフ束のラプラシアンの Moore 行列式 (ある種の非可換行列式) が、そのグラフの cycle-rooted spanning forests と呼ばれる部分グラフに関するモノドロミーを用いて記述できることを示した。これは、今後 Ihara ゼータ関数の研究に応用できると期待される。以上はニューヨーク市立大学シティカレッジの Gautam Chinta 氏との共同研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究について、ニューヨーク市立大学シティカレッジの Gautam Chinta 氏と共同研究を始めることができた。これによって、より数論的・表現論的なアプローチが可能になったことは非常に大きい。実際、上記の Hecke 群に対する Cayley グラフの熱核の研究など、関連する研究内容で新たな裾野を広げることができた。また、グラフ束のラプラシアンの非可換行列式の研究は、これまでにはない新しいものであるが、将来数論だけではなく確率論や組合せ論への応用を目指したものでもあり、まず第一歩が踏み出せたことは非常に意味のあることだと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Hecke 群に対する Cayley グラフの熱核の研究は、一定の結果は得られたが、既存の特殊関数との関連や漸近的な挙動の解明など、まだ考えるべき問題が多数残っているので、引き続き Chinta 氏と共同研究を行いながら進めていく。また、グラフの極限とみなせる多様体の熱核についても整理が必要である。これについては、同じくニューヨーク市立大学シティカレッジの Jay Jorgenson 氏とも連携して研究を進める。また、グラフ束のラプラシアンの非可換行列式の研究は一段落したと思われるので、論文にまとめて投稿する。
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