2016 Fiscal Year Research-status Report
簡約型球等質空間に対するカルタン分解と不変測度の研究
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15K04797
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
笹木 集夢 東海大学, 理学部, 准教授 (60514453)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 群の分解定理 / 等質空間上の不変測度 / 制限ルート / 完全代表系 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)平成27年度からの継続課題として非管状型非コンパクトエルミート対称空間の複素化上を底空間とする直線束(これを球複素直線束と略記する)に対して,その不変測度の研究を行った.具体的に不変測度を与えることに既に成功していたものの,その他の既約球等質空間に対する不変測度の研究のためにより精緻な研究を行った. (2)同じく平成27年度に,上述以外の既約球等質空間に対してカルタン分解を与え,対応する両側剰余空間の代表系について考察した.この代表系の構成についてより精緻に研究を行い,制限ルートの集合を決定した.Kramer [Compositio Math. 38 (1979)]による分類のうち2系列のみルート系の公理を満たし,それ以外の系列は公理を満たさないことを明らかにした. (3)既約球等質空間に対するカルタン分解の結果について,鳥取で開催された2016年度表現論ワークショップ(2017年1月)や名城大学で開催された研究集会(2017年3月)において講演を行った.また,球複素直線束に関する表現論の結果について,広島大学トポロジー・幾何セミナー(2016年10月)や富山大学で開催された研究集会(2017年2月)で発表した. (4)半単純擬リーマン対称対とコンパクト半単純対称三対との間に双対定理を与えた(本研究は,井川治氏(京都工芸繊維大)と馬場蔵人氏(東京理科大)との共同研究である).本研究は当初の予定にはなかった課題であるが,本研究課題に寄与するものと期待される.現在は半単純擬リーマン対称対の分類の別証明や群作用による軌道幾何への応用を目指している.本研究の成果を関西大学で開催された日本数学会秋季総合分科会(2016年9月)で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に非管状型非コンパクトエルミート対称空間の複素化上を底空間とする直線束上の不変測度の構成を行ったが,本研究結果に関する論文執筆が予定よりも遅れている. 既約球等質空間におけるカルタン分解をコンパクト実型の作用による軌道分解の視点で捉えた際に,各軌道と1回だけ交叉する部分集合(完全代表系)を明らかにすることは本研究で必要とするのみならず多方面でも重要であることが他の研究者からも指摘されている.本研究課題である不変測度の研究に取り組むと同時に完全代表系の決定の研究に時間を要している.また,不変測度の制限ルートによる表示において,最適な表示法を模索している.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)前年度に引き続き,非管状型非コンパクトエルミート対称空間の複素化上を底空間とする直線束に対する不変測度の研究の結果を論文にまとめるとともに,国内外で成果を発表する. (2)既約球等質空間のうち制限ルートの集合がルート系の公理を満たす2系列に対して,完全代表系の決定や不変測度の研究を遂行する.この場合,ワイル群に相当する概念や制限ルートのワイル群の概念が対称空間の場合と同様に定義され理解されるという予想に基づき,この方向から研究を進める. (3)既約球等質空間に対するカルタン分解における完全代表系の決定に関する研究を継続する.特に,既約ではない場合の研究につなげるための考察を継続して行う. (4)半単純擬リーマン対称対とコンパクト半単純対称三対との間の双対定理を活用して本研究課題への応用を検討する.本課題については,引き続き井川治氏(京都工芸繊維大)および馬場蔵人氏(東京理科大)と共同で研究を継続する.
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Causes of Carryover |
本研究課題あるいは本研究課題から派生した問題に取り組む時間を要し,国内外で発表する機会を減らしたことが要因である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は,本研究を継続して実施し,さらに資料収集のために書籍の購入や論文複写,研究に必要な物品費に充当する.また,情報収集のために京都大学数理解析研究所研究集会・山形大学で開催予定の日本数学会秋季総合分科会・鳥取で開催予定の表現論ワークショップなどに参加する一方,12月にチュニジアで開催予定の日本・チュニジア間国際研究集会に参加し講演する予定である.そのための出張旅費に充てる.
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