2017 Fiscal Year Research-status Report
簡約型球等質空間に対するカルタン分解と不変測度の研究
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15K04797
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
笹木 集夢 東海大学, 理学部, 准教授 (60514453)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カルタン分解 / 球等質空間 / 一般化された双対性 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)非対称な簡約型球等質空間に対するカルタン分解の研究において,既約な場合は研究代表者によって本研究課題内で解決したが,今年度は既約でない場合についても解決することができた.既約でない場合は,Brion [Compositio Math. 63 (1987)]によると本質的には10系列あるが,各場合について具体的に可換部分を構成することに成功した.これにより,簡約型球等質空間に対するカルタン分解が完全に解決した.特に,可換部分空間の具体的表示も与えた.本結果について,チュニジアで開催された国際研究集会(2017年12月),首都大学東京幾何学セミナー(2018年1月)および日本数学会2018年度年会(2018年3月)で講演を行った. (2)複素単純リー環の球冪零軌道における可視的作用に関する論文[J. Lie Theory 26 (2016)]に引き続き,各軌道と交叉するスライスの次元公式を与えた.さらに球冪零軌道上の無重複表現に現れる最高ウェイトのなす半群の階数と一致することを証明した.その結果に関する論文が出版された(2018年2月). (3)前年度に半単純擬リーマン対称対とコンパクト半単純対称三対との間に双対性を与えた(一般化された双対性)が,この結果に関する論文が出版された(2017年9月).本研究は,井川治氏(京都工芸繊維大)と馬場蔵人氏(東京理科大)との共同研究である. (4)(3)の研究の応用として,(擬)リーマン幾何学におけるキャリブレーション(不)等式を用いた部分多様体の特徴付けを,一般化された双対性を利用した新しい解釈を与えた.この結果を,日本数学会2018年度年会で発表した(2018年3月).本研究は,井川治氏(京都工芸繊維大)と馬場蔵人氏(東京理科大)との共同研究である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題申請時に立てた計画と比較すると予定より遅れている.本研究を遂行するにあたり様々な結果が発見されているのと同時に新たな課題が生まれることによる.一方で,それらの結果が本研究計画時では予想しなかったものでかつ重要なことが分かり,より精緻な研究を遂行することができているという点で進展しているとも評価している.特に,簡約型球等質空間に対するカルタン分解において可換部分空間と調和解析への応用との視点を絡めた研究の方向性が対称空間に対するそれの拡張として理解しつつある段階である.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)本研究課題で得られた成果(簡約型球等質空間に対するカルタン分解,これまでに得られた不変測度に関する結果など)について論文執筆を行う予定である.また,成果発表を福島幾何学研究集会(2018年6月,福島),日本数学会秋季総合分科会(2018年9月,岡山)や鳥取でのワークショップなどで行う. (2)簡約型球等質空間の不変測度の研究を継続する.対称空間に対する手法の拡張によって不変測度を明示的に求める方法を模索する.現在,カルタン分解の可換部分についてより精緻な研究が進みつつあり,必要に応じて他の研究者との連携を計りながら研究を遂行する. (3)半単純擬リーマン対称対とコンパクト半単純対称三対との間の双対定理を活用して(擬)リーマン幾何学におけるキャリブレーション(不)等式と部分多様体の特徴付けの研究を継続する.特に,対称空間論を用いた統一的解釈を目指す.本課題については,引き続き井川治氏(京都工芸繊維大)および馬場蔵人氏(東京理科大)と共同で研究を継続する. (4)上述に関連して,関連する研究集会に参加し情報収集にあたる.特に,Sfax大学(チュニジア)のAli Baklouti氏と研究打ち合わせを行う(2018年9月予定,Sfax,チュニジア).
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Causes of Carryover |
平成28年度からの繰り越し分に加えて,本研究を集中して遂行するために国内出張を若干控えたことにより次年度使用額が生じた. 平成30年度は本研究課題の最終年度にあたるため,これまでの成果を国内外で発表し論文を執筆する予定である.成果発表のために国内外の出張旅費に充てる.現在の予定では,京都大学数理解析研究所研究集会などに参加して情報収集にあたるほか,福島幾何学研究集会,日本数学科秋季総合分科会,鳥取での表現論ワークショップで研究成果を発表する予定である.また,論文執筆に必要な機器の購入を計画している. さらに,本研究と関連してSfax大学(チュニジア)のAli Baklouti氏との共同研究を計画しており,2018年9月にSfax大学へ訪問予定である.そのための出張旅費に充てる.
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