2016 Fiscal Year Research-status Report
数論的多重対数予想の解決を担う新しい直交多項式系の創成とパデ近似
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15K04799
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
平田 典子 (河野典子) 日本大学, 理工学部, 教授 (90215195)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 対数関数 / 多重対数 / ディオファントス近似 / パデ近似 / p進解析 / 無理数 / 超越数 / 楕円対数 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度には,非常に著しい研究の進展があった.第一の仕事は代数体のうえで,任意個の一次独立な多重対数の構成を系として従えるような,一般的判定条件およびその定量的な結果を与えたことである.研究構想は以前より存在したが,研究講演会等で講演や議論をするごとに新しい知見を得て,定量化を含む精密な記述に到ったものである.当該成果は有理数体を含む高次の代数体における一次独立な多重対数の最初の具体例をあげたものとなり,有理数体に制限をした場合でも過去のNikisinの結果などの先行研究を改良する内容になった.研究代表者はイタリアにおけるディオファントス問題の国際研究集会「Leuca 2016」の基調講演者として招かれ,当該成果の発表をおこない,ドイツの数学研究所(Mathematisches Forschungsinstitut Oberwolfach)でのディオファントス近似の研究集会にも招聘されて討議を実施し,座長も務めた.論文は印刷中である. 第二の成果は下記の通りである.平成29年1月7日から9日までの3日間に,研究代表者らが構成する組織委員会によりDARF2017という国際研究集会を開催し,招聘した世界最高峰の専門家たちと有意義な研究討議を実施した.参加者総数は105名であった.とりわけ基調講演者 M. Waldschmidt, Y. Bugeaud, S. David, F. Lucaらと意見交換を行ったが,特にS. Davidと共同で,パデ近似の証明に現れる行列式の評価に対し卓越した新奇性のある手法の構築をすることができた.またY. Bugeaudと楕円対数についての新しい共同研究に着手して成果を獲得できたため,論文を執筆中である. なお,多重対数に関連する数の無理数性に対し,未解決予想を含む重要な問題を解明する萌芽的な着想を得た.これについては厳密な検証を実施中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
思いがけず良い成果が獲得出来た理由としては,日頃からメールで討議している研究者らと,実際に顔を合わせて議論できるような機会にめぐまれたことである.S. Davidとは,国際研究集会DARF2017(Diophantine Analysis and Related Fields 2017,日本大学理工学部において当該研究費を一部使用して開催)の際に,パデ近似の証明に現れる行列式の評価に関する新規の手法について議論した.行列式の評価について繰り返して何度も討議して得られた成果を現在まとめている.またY. Bugeaudとも,招聘した上記国際研究集会DARF2017の期間中の研究討議がきっかけとなって,新しい共同研究に着手した.興味深い成果を獲得できたため,共著論文を執筆中である. 多重対数に関連する無理数性の予想に関し,重要な寄与を可能とするような着想を得たが,これも国際研究集会DARF2017で聴いた招待者の講演の内容がヒントになった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始時には予測していなかった,多重対数に関連する数論的性質を明らかにできるような,萌芽的な研究の着想を得た.このため関連した課題について Y. Bugeaud氏と研究討議をさらに推進するという目的で,研究代表者及び Bugeaud氏が双方とも講演者として招かれているカナダ Banff Centre の BIRS 研究所における研究集会 Diophantine Approximation and Algebraic Curves (平成29年7月2日~7月7日)に参加することを平成28年度の後半期に決め,海外旅費を平成29年度に使うことにした.その研究集会では Bugeaud氏らと綿密な討議を徹底的に交わす予定である.さらにこの機会を活用して,楕円対数とその一般化における新しい数論的性質の考究も目指す.また無理数性およびディオファントス近似に関する重要な結果が講演されると思われる,平成29年6月フランス Caen 開催予定の研究集会 Journees Arithmetiquesに,研究協力者である川島誠氏(大阪大学)を派遣し,情報収集を依頼する. これらの討議結果や情報を総括し,最終的な研究目的を達成するべく,研究を徹底的に推進する.
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Causes of Carryover |
研究開始時には予想外であった斬新な着想を獲得し,これを核とした研究を発展させるため,下記の海外出張および派遣を急遽決めたことが,次年度使用額が生じた理由である. 第一には,着想推進のためにY. Bugeaud氏と討議できるようカナダBIRS 研究所での研究集会(平成29年7月)に参加することを決め,研究代表者の海外出張旅費を平成29年度に使うように急に変更したからである.第二に,ディオファントス問題に関する情報獲得が可能な平成29年6月フランス開催の研究集会Journees Arithmetiquesに,研究協力者の川島誠氏(大阪大学)を派遣して情報収集を依頼することにしたからである.このため平成29年度に研究費を使えるよう,DARF2017への招待者に対して彼ら自身の研究費で航空券代を賄ってもらうなど他の研究費への一部依存を依頼し,運良く可能になったため平成28年度支出を減らした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表者がカナダ Banff Centre の BIRS 研究所における研究集会(平成29年7月2日~7月7日)に参加するため,海外出張旅費を支出する.また研究協力者である川島誠氏(大阪大学)を,フランス Caen 開催の研究集会 Journees Arithmetiques(平成29年6月)に派遣して,重要な講演内容の情報収集を依頼する.このための海外派遣旅費を支出する. 以上2件で合計55万円程度を,平成29年度に使用できるような計画に急遽,変更した.
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