2015 Fiscal Year Research-status Report
極小モデル理論の視点からのユニポテント代数群作用を持つ代数多様体の族の構造解析
Project/Area Number |
15K04805
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
岸本 崇 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20372576)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ユニポテント代数群作用 / del Pezzoファイブレーション / 森ファイバー空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の主な研究実績は,共同研究者であるAdrien Dubouloz氏(Bourgogne大学)との「代数閉体ではない体上に定義されている極小del Pezzo曲面内のシリンダー及び,高次元del Pezzoファイブレーション内の垂直シリンダーの存在についての応用」についての考察である.一般に,del Pezzoファイブレーションが与えられたときに,各々の閉ファイバーはシリンダーを含んでいたとしても,全体としてファイブレーションが垂直なシリンダーを持つとは限らない.垂直なシリンダーを全体として持つかどうかは,ファイブレーションの生成ファイバーの幾何学が鍵になってくる.しかし生成ファイバーはファイブレーションの底空間の有理関数体上に定義された極小なdel Pezzo曲面となる.複素数体などの代数閉体上に定義されたdel Pezzo曲面であれば,その構造は古典的にも詳細に研究されているが,底空間の有理関数体は代数閉体ではないので,生成ファイバーの構造は把握するには様々な困難が生じる.主な困難点は,底空間の有理関数体上では目に見えない因子でも代数閉体までに係数拡大すれば出現するという現象である.この点について,Dubouloz氏との共同研究によって,係数拡大体に関するGalois群の作用のアイデアを用いて問題点を完全に解決することができた.結果として,del Pezzoファイブレーションの次数(7を除く1から9迄の自然数)について,次数が4以下であれば垂直シリンダーは含まず,次数が5以上であれば垂直シリンダーを含み,さらに次数が8,9であればアフィン平面によるシリンダーまで含むことが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題「極小モデル理論の視点からのユニポテント代数群作用を持つ代数多様体の族の構造解析」の例として,我々はdel Pezzoファイブレーションを考えた.del Pezzoファイブレーションの一般の閉ファイバーは代数閉体上に定義された非特異del Pezzo曲面であり,このような曲面は全てアフィン平面を含むことが容易に分かる.しかし,del Pezzoファイブレーションの全空間は垂直なアフィン平面によるシリンダーを含むとは限らない.様々な具体例,考察を通していくうちに,事象の本質は各閉ファイバーではなく,生成ファイバーという幾何学的にはイメージしにくい対象にあるということが経験的に分かってはきていた.代数閉体上に定義されたdel Pezzo曲面であればその構造解析は比較的古くから研究され続けているが,生成ファイバーはdel Pezzoファイブレーションの底空間の有理関数体上に定義されている極小なdel Pezzo曲面であるので,目に見えず想像しにくい幾何学的対象となる.例えば複素数体上に定義されている代数多様体上で展開できる交叉理論などが,今の場合にはそのままでは使用できない.しかし底空間の有理関数体の適当な有限次Galois拡大をとることにより,生成ファイバーの係数を拡大すれば,交叉理論が適用できる状況になるので,対応するGalois拡大に付随するGalois群作用に関して同変な交叉理論を考察することにより,我々の関心のある極小del Pezzo曲面の議論に持ち込むことができるようになった.この結果については現在投稿に向けて執筆中である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は主にdel Pezzoファイブレーションに含まれる垂直なシリンダーについて考察してきた.これは視点としては,既に特別な森ファイバー空間が与えられていて,その中に含まれるシリンダーを探すということで,射影的な対象からスタートしていたのであるが,平成28年度は方向を逆にして,適当な代数群作用を有する特殊なアフィン代数多様体からスタートして,その同変的な森ファイバー空間への埋め込みを考察を通して,特異ファイバーの性質を観察しようと考えている.より詳細に述べる.3次元以上のアフィン代数多様体の場合,そのGa作用(1次元のユニポテント代数群作用)の商写像の特異ファイバーについての構造は非常に複雑である.不思議に思えるかもしれないが,2次元以下または4次元以上のアフィン代数多様体の場合には,商写像は全射になる.一方で3次元のアフィン代数多様体の場合には全射になるとは限らない.例えばSL2などはGa作用による商写像はアフィン平面A2への射になっていて,原点以外ではそのファイバーはGaであるが,原点上でが空である.そのような場合であっても,原点上に適当なアフィン曲面を付け加えて,適当な3次元アフィン代数多様体からのアフィン平面A2への全射なGa商写像に拡張することはできる.この場合,「原点上に出現し得るファイバーはどのような特徴を持っているのであろうか?」という素朴な疑問が生じる.予想としては,原点上のファイバーはシリンダーを含むと思っているが,現在のところまだ証明は完成していない.この問題について,Adrien Dubouloz氏(Bourgogne大学)とIsac Heden氏(RIMS,外国人特別研究員)との共同研究によって解決することを今年度の主な研究と位置づけている.
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Causes of Carryover |
事務的な理由で年度末には旅費以外には科研費を使用できないと伺っていたが,約2万円程度を旅費で使用するのは無理があった為に翌年度に繰り越した.(しかし年度末に旅費以外に使用できないというのは,平成27年度が最終年度であった研究分担者の分の科研費だったみたいである.)
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2万円という比較的微笑な額である為に,適宜,数学書籍若しくは文房具の購入に使用する予定である.
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Research Products
(5 results)