2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K04823
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
安部 利之 愛媛大学, 教育学部, 教授 (30380215)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 頂点作用素代数 / オービフォールド模型 / 誘導表現 / ツイスト加群 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は頂点作用素代数の誘導表現の構成に関し、次の2点の研究を行った。 (1)ツイスト加群を与える普遍包絡代数の構成、 (2)いくつかの具体的な模型に関するフュージョン則の考察。 (1)に関しては、部分頂点作用素代数の加群に普遍包絡環のテンソル積を考えることによって、元の頂点作用素代数の加群を構成することを目指しているが、部分頂点作用素代数が、オービフォールド模型と呼ばれる有限自己同型群の固定点のなす部分加群の場合、ツイスト加群も考慮必要があるため、誘導表現がツイスト加群となるような普遍包絡代数を考える必要がある。そこでそのような普遍包絡代数の構成を行った。今後の課題は一般に普遍包絡代数をテンソル積したものが、加群となるとは期待できないので、いつ加群になるのか、又は加群にするために必要な操作について考察を行っていく。(2)に関しては、誘導表現の構成には頂点作用素代数の加群の間のフュージョン則と密接に関係があることがその成果の根底にある。そのフュージョン則に関しては知られていることも多いが、あまり系統立てられているわけではなく、個々の状況に応じて決定されており、一般的に得られている定理等はあまり多くはないように思われる。オービフォールド模型に関しても同様で符号頂点作用素代数や格子頂点作用素代数の対合によるオービフォールド模型についてはフュージョン則は知られているが、位数が3以上の自己同型については部分的な成果のみが知られている。そこで量子次元の考察から得られるフュージョン則とこれまで知られている成果とを比較することで、素数位数の巡回群の場合にオービフォールド模型のフュージョン則に関し予想を立てることができた。その検証のために格子頂点作用素代数において予想が正しいかについて現在確かめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
頂点作用素代数の表現論において, フュージョン則の決定は重要な問題であるが, このフュージョン則の決定はそれほど容易ではない。ただ今年度の研究において、オービフォールド模型の加群たちの間のフュージョン則について、自己同型群が素数位数の巡回群の場合には、予想を立てることができた。この予想は現在フュージョン則の知られているいくつかの具体的な模型に対しては成り立っている。その予想が正しいこと及び証明の方針を探るために、フュージョン則の知られていないいくつかの模型のフュージョン則の決定に着手した。特に格子頂点作用素代数の場合について興味を持ち、フュージョン則の決定に取り組んでいるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題の達成に向けて、次の二つの研究方針を考えている。 (1)普遍包絡代数のテンソルとして得られる普遍包絡代数の加群が頂点作用素代数の加群となるための条件や操作の探索、 (2)格子頂点作用素代数の位数が 3 以上の素数位数の巡回群によるオービフォールド模型の既約加群の間のフュージョン則の決定。 (1)に関しては今年度の成果の継続であるが、本研究の主要な研究目的の一つである。今年度の研究を通し、少しずつではあるが見通しが良くなってきたように感じているが、まだはっきりとした方策や考え方が得られていないので、次年度も引き続き考察をしていく。(2)に関しては(1)を裏付けるための根拠となる研究である。そのフュージョン則に関しては、予想を立てた。格子頂点作用素代数については、位数2の場合についてはよく研究されているが、この予想は位数2の場合には問題なく成り立っていることを確認できたので、位数3以上の場合にも正しいことを確認する。この場合にはフュージョン則が完全に決定されているものは部分的にしか知られていず、現在のところ予想が正しいかどうかについては確認していない。ただ研究過程において、この場合に一般的にフュージョン則が決定する方針が見えてきたので、そこで今後は格子頂点作用素代数に関し、フュージョン則を決定し、予想が正しいかの検証を同時に行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
27年度の3月に台湾で行われるworkshop に出張予定であったが、都合がつかず取りやめにした。その影響でその出張予定旅費を次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した研究費については、次年度以降海外出張旅費として使用する予定である。現在のところ平成28年度8月に行われる台湾での国際研究集会への出張旅費として考えている。
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Research Products
(1 results)