2015 Fiscal Year Research-status Report
偏極代数多様体に対する小林・ヒッチン対応のケーラー・リッチ流の観点からの研究
Project/Area Number |
15K04848
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
中川 泰宏 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90250662)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | Einstein・Kaehler 計量 / 幾何学的不変式論 / 安定性 / Kaehler・Ricci ソリトン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究に引き続き,偏極代数多様体の幾何学的不変式論の意味における安定性と定スカラー曲率 Kaehler 計量の存在とが同値になるという予想,いわゆる「偏極代数多様体に対する小林・Hitchin 対応」を中心に研究した. 特に本年度は,Einstein・Kaehler Fano 多様体を底空間とするいくつかの複素直線束達の直和のコンパクト化として得られるトーリック束である種の条件を満たす空間の上で Einstein・Kaehler 計量の存在問題を考察した.まず,仮定された条件のもとで,反標準類を実現する Kaehler 形式を具体的に構成することにより,考えているトーリック束が Fano 多様体となる事を示すことに成功した.さらに,考えているトーリック束の上に Einstein・Kaehler 計量が存在のための必要十分条件を提唱することができた.また,典型的な例として底空間がいくつかの複素射影空間の直積である場合を考察し,この条件が実際に必要十分条件となっていることを確認することができた. 実は考えているトーリック束には常にファイバー方向の正則ベクトル場を用いた Kaehler・Ricci ソリトンが存在し,そのファイバー方向の正則ベクトル場として 0 が取れる(この時,Kaehler・Ricci ソリトンは Einstein・Kaehler 計量となる)ための条件が提唱した条件になっているのではないかと予想しているが,この予想に関しては今後の課題である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Einstein・Kaehler Fano 多様体を底空間とするトーリック束である種の条件を満たす空間の上で Einstein・Kaehler 計量の存在問題を考察した.まず,仮定された条件のもとで,考えているトーリック束は Fano 多様体となる事を示すことに成功した.さらに,考えているトーリック束の上に Einstein・Kaehler 計量が存在のための必要十分条件を提唱することができ,典型的な例として底空間がいくつかの複素射影空間の直積である場合を考察し,この条件が実際に必要十分条件となっていることを確認することができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは今年度の研究で考察したいくつかの射影空間の直積を底空間としたトーリック束に無条件にファイバー方向の正則ベクトル場を用いた Kaehler・Ricci ソリトンが存在することを示し,その正則ベクトル場として 0 が取れるための条件が提唱した条件となることを示したい.さらには,この問題をより一般の場合にも解決することを目指したい.これは,Wang・Zhu によるトーリック Fano 多様体上の Kaehler・Ricci ソリトンの存在定理の一般化(相対化)となる. さらに Kaehler・Ricci 流観点からの Fano 多様体の場合の小林・Hitchin 対応の解決を目指したい.Donaldson や Uhlenbeck・Yau による「正則ベクトル束に対する小林・Hitchin 対応」の熱流を用いた解決や,Cao による Ricci 曲率が不またはゼロの時の Einstein・Kaehler 計量の存在問題の Kaehler・Ricci 流を用いた解決などからも,この観点での大きな進展が得られることは十分期待できる.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額は 3820 円と小額なので,次年度の研究計画に支障を来さないと判断した.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究で考察する種々の問題はどれも多分野,特に代数幾何学・複素微分幾何学および解析学(特に偏微分方程式)にまたがっており,多様な情報を収集する必要がある.そのために,幾何学関係・代数学関係および解析学関係の書籍を必要とする.また,これらの研究テーマはここ数年で急速に発展してきている.そこで,最新の研究結果を収集するために,国内外の研究集会に参加する必要がある.よって,2016 年度は,物品費:203,820 円,旅費:500,000 円,人件費・謝金:100,000 円の使用を予定している.
|