2018 Fiscal Year Research-status Report
偏極代数多様体に対する小林・ヒッチン対応のケーラー・リッチ流の観点からの研究
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15K04848
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
中川 泰宏 佐賀大学, 理工学部, 教授 (90250662)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Einstein・Kaehler 計量 / Kaehlre・Ricci ソリトン / 幾何学的不変式論 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究に引き続き,偏極代数多様体の幾何学的不変式論の意味における安定性と定スカラー曲率 Kaehler 計量の存在とが同値になるという予想,いわゆる「偏極代数多様体に対する小林・Hitchin 対応」を中心に研究した. 特に本年度は,Einstein・Kaehler・Fano 多様体を底空間とするいくつかの複素直線束達の直和のコンパクト化として得られるトーリック束で,ある種の条件を満たすもの(論文では KSM 多様体と呼ぶことにした)の上で Kaehler・Ricci ソリトンの存在問題を考察した.ここで,Kaehler・Ricci ソリトンとは Einstein・Kaehler 計量のある種の一般化であり,Kaehler・Ricci 流の研究において重要な概念である.昨年度までの研究で,仮定された条件のもとで,反標準類を実現する Kaehler 形式を具体的に攻勢することにより,考えているトーリック束が Fano 多様体となる事を示すことに成功し,考えているトーリック束の上に,適切な正則ベクトル場を用いた Kaehler・Ricci ソリトンが必ず存在するという予想を提唱した.この予想は,Wang・Zhu によるトーリック Fano 多様体上の Kaehler・Ricci ソリトンの存在定理の一般化(相対化)となるものである.昨年度までの研究では底空間の Einstein・Kaehler・Fano 多様体が等質的であるときに,この予想の証明を与えることができていた.本年度は Berman・Berndtsson による実 Monge・Ampere 方程式の理論を応用することにより,全く一般の状況で予想を証明することに成功した.これらの結果については,論文「Kaehler-Ricci solitons on certain toric bundoles」にまとめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Einstein・Kaehler Fano 多様体を底空間とするトーリック束である種の条件を満たす空間(論文では KSM 多様体と呼ぶことにした)の上で Kaehler・Ricci ソリトンの存在問題を考察した.まず,仮定された条件のもとで,考えているトーリック束は Fano 多様体となる事を示すことに成功した.技術的な問題により,当初は考えているトーリック束の底空間が等質的な時でないと Kaehler・Ricci ソリトンの存在を示すことができそうにないと思っていたが,Berman・Berndtsson による実 Monge・Ampere 方程式の理論をうまく応用することにより,全く一般の状況で KaehlerRicci ソリトンの存在を証明することに成功した.これらの結果については,論文「Kaehler-Ricci solitons on certain toric bundoles」にまとめた.
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Strategy for Future Research Activity |
KSM 多様体上に Kaehler・Ricci ソリトンが必ず存在することは今年度までの研究で証明した.今後は,満渕により導入された「一般化された Einstein・Kaehler 計量(満渕ソリトンあるいは満渕計量と呼ばれることもある)」の存在問題についても考察したい.トーリック Fano 多様体上の「一般化された Einstein・Kaehler 計量」については,Yao や中村聡により研究が進められており,著しく進展している.彼らの研究成果を KSM 多様体の場合に拡張したいと考えている. さらに,Kaehler・Ricci 流の観点からの Fano 多様体の場合の小林・Hitchin 対応の解決を目指したい.Donaldson や Uhlenbeck・Yau による「正則ベクトル束に対する小林・Hitchin 対応」の熱流を用いた解決や,Cao による Ricci 曲率が負または零の時の Einstein・Kaehler 計量の存在問題の Kaehler・Ricci 流を用いた解決などからも,この観点での大きな進展が得られることは十分期待できる.
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Causes of Carryover |
(理由)諸事情により当初予定していたいくつかの研究集会等に出席することができなかった. (使用計画)使用しているコンピューターやプリンターの更新の必要があるので,それらに使用する予定である.
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