2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K04853
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
辻 元 上智大学, 理工学部, 教授 (30172000)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ケーラー・リッチ流 / モンジュ・アンペール方程式 / 粘性解 / 多重種数 / ベルグマン核 / 極値的測度 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケーラー・リッチ流の時間離散化について研究した。その結果、時間離散化をたあとで、離散時間の間隔を小さくして0に収束させるとケーラー・リッチ流が再現できることを証明した。 証明の要点は以下のとおり。まず、離散化したケーラー・リッチ流の極限が、複素モンジュ・アンペール方程式の粘性解になることを証明した。ここで粘性解とは、ラプラス方程式のディリクレ問題のペロン解の非線形方程式版である。次に粘性解が、空でないザリスキ開集合上で滑らかな古典解になることは最近のEyssidieux-Guedj-Zariahiの放物型複素モンジュ・アンペール方程式の粘性解の理論を用いればよい。この研究はエコール・ポリテクニックのSebastien Boucksom氏との共同研究である。 この時間離散化の意義は、ケーラー・リッチ流をベルグマン核、あるいは極値的速度の力学系に結びつけるのに役に立つことで、たとえばコンパクト複素多様体の射影族の上で、大域的なケーラー形式を始点とするファイバー毎のケーラー・リッチ流が大域的な半正値性を保つことが証明される。これは、相対多重標準束の直像の半正値性の一般化になっている。 このことから、コンパクト複素多様体の射影族もしくは、ケーラー族で且つファイバーがアバンダント、即ち各ファイバーの標準束が準アンプルな場合の多重種数が変形不変性をもつことが証明できる。このこと自体は驚くような定理ではないが,コンパクト複素多様体のケーラー族において多重種数の変形不変性がなりたつことを支持する結果として重要性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コンパクト複素多様体の射影族については所要の結果が得られた。即ち、ケーラー・リッチ流の多重劣調和性と多重種数の変形不変性が得られた。さらに、コンパクト複素多様体のケーラー族で射影的なファイバーが稠密なものについても、極値的測度を用いることにより多重種数の変形不変性が得られたので、コンパクト複素多様体のケーラー族について多重種数の変形不変の証明について足掛りが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた研究結果については、現在、論文を執筆中であり、それを仕上げることが取り敢えずの課題である。次にコンパクト・ケーラー多様体の極小モデル理論をケーラー・リッチ流を用いて構築することが次の目標になる。これについては、標準束が擬正の場合にケーラー・リッチ流の時間大域解を構成した。今後は、このように構成した解の性質を研究してゆきたい。
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Causes of Carryover |
フランス、パリのエコール・ポリテクニックに出張しようと考えていたが、パリでテロが起きたため、急遽予定を変更しキャンセルした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
6月にToulouseで行われるシンポジウム、Complex Geometry Symposiumに出席予定。及び、7月に行われる多変数関数論葉山シンポジウムにS. Lu氏を招聘する予定である。
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