2016 Fiscal Year Research-status Report
アフィン接続が与えられた多様体の幾何の多角的研究とその応用
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15K04861
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
黒瀬 俊 関西学院大学, 理工学部, 教授 (30215107)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 統計多様体 / 情報幾何 / 等積アフィン平面曲線 / 定曲率曲面上の曲線 / 平面曲線の運動 / ミウラ変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、統計多様体の幾何およびアフィン平面などの2次元空間の曲線の運動を用いた可積分系理論の幾何化について研究をすすめた。 1. 統計多様体が(-1)-共形平坦と呼ばれる性質を満たしている場合、距離関数の平方に類似の2点関数が存在して、ガウスの補題型の命題が成り立つ。これは統計多様体の情報幾何への応用で大きな役割を果たしている命題の一つであり、このような命題が成り立つような形で統計多様体の一般化をすることは、情報幾何への応用で重要であるだけでなく、アフィン接続の幾何における非常に興味深い研究対象を与えることになる。そこで、平成28年度は2次元の場合にガウスの補題型命題が成り立つようなアフィン接続とリーマン多様体の組を具体的に構成することを試みた。その結果、アフィン接続とリーマン計量が満たすべき必要条件を得たほか、アフィン接続が平坦である場合はほぼ統計多様体に限られることがわかった。そこで、今後は上に述べた必要条件をさらに精緻なものにし、アフィン接続が平坦でない具体例を構成することを目指す。 2. 変形KdV方程式(または非収束型変形KdV方程式)とKdV方程式の間のミウラ変換がユークリッド平面曲線(またはミンコフスキー平面曲線)と等積アフィン平面曲線の対応という形で幾何化できるという既知の事実を、球面・双曲平面(またはド・ジッター曲面)上の曲線と等積アフィン平面曲線の対応に連続性をもって一般化できることを示した。さらに、ド・ジッター曲面の場合は、ミウラ変換を与えるもう一つの幾何的対応でミンコフスキー平面の場合には連続的につながらないものがあることを発見した。これらの結果は可積分系理論の幾何化において一つの意義ある結果であるというだけでなく、今後これらの平面・曲面上の曲線の運動に幾何的に多重ハミルトン系としての記述を与える上で大きな手がかりとなるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、平成28年度は 1. 統計多様体の幾何の研究と 2. アフィン平面などの2次元空間の曲線の運動を用いた可積分系理論の幾何化に関する研究を平行してすすめた。このうち、1.は平成27年度までの研究から派生してきたテーマであり、当初設定した課題のいくつかと密接に関連している。平成28年度中にはまだ大きくまとまった結果を得るところまでは行かなかったものの、申請時は気づいていなかった重要課題が認識され、部分的ながらも調査が進められた点で、まずまず順調に研究が進展していると言えるものと考えている。一方、2.は申請時の研究計画で述べた課題の一つ「アフィン空間内の曲線の運動に現れる可積分系方程式」に関するものであり、今回ミウラ変換に対応する幾何的変換を一般化でき、KdV方程式が現れる等積アフィン平面曲線の運動がいくつかの平面の曲線の運動の中で一つの中心的な存在であることを支持する成果が得られた点などで、この課題の研究も順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在の進捗状況」で述べたように本研究はおおむね順調に進展しているので、今後の研究はこれまで得られた研究成果を発展させる方向で進める。特に、等積ではないアフィン平面や3次元以上のアフィン空間の曲線の運動から得られる可積分系について詳しく調査・研究すること、およびガウスの補題型命題が成り立つ幾何構造を具体的に与えることは平成29年度の大きなテーマである。さらに、新規のコンピュータ・システムの導入が遅れたため中断していたヘッセ断面曲率一定のヘッセ多様体の分類問題も研究を再開して解決を目指し、そうして得られた成果を一歩進めて閉曲面上に入る統計構造の特徴づけの問題への足がかりとしたい。 なお、研究経費は本研究課題に関連する諸分野の学会・研究集会の開催や参加、専門家のもとへの訪問・招聘のために使用し、必要な情報や文献の収拾、研究打ち合わせを活発に行う予定である。
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Causes of Carryover |
情報機器の導入のための「物品費」と、情報収集・成果報告のための「旅費」が当初の見込みより多く必要になり、その捻出のため「人件費・謝金」および「その他」の支出を控えたため、その余剰として次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度はアブストラクト集の印刷など「その他」で多く使用する予定があり、次年度使用額は「旅費」およびコンピュータ周辺機器に対する「物品費」に繰り入れて使用する計画である。
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Research Products
(2 results)