2016 Fiscal Year Research-status Report
離散モース理論の精密化による配置空間のモデルの構築
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15K04870
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
玉木 大 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (10252058)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 離散モース理論 / stratified space / 2-category / 分類空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 配置空間に関する研究と離散モース理論の精密化を行なう部分の二つから成るが, 平成28年度は, 主に離散モース理論に関する研究が進展した。具体的な内容は以下の通りである。 Forman による古典的な離散モース理論の主定理は, 与えられた正則胞体複体 X 上の離散モース関数 f から, X とホモトピー同値であり, 胞体が f の臨界胞体だけから成るCW複体 X_f が存在することである。しかしながら, その証明は具体的な構成を与えていない。一方, 可微分多様体のモース理論でも同様の事実があるが, その際の X_f の構成には, f の勾配ベクトル場から得られる flow に関する不安定多様体が用いられる。 そこで, 平成27年度には, 離散モース関数 f から勾配ベクトル場の類似, そしてその flow の類似を定義し, それらを用いて 2-category C(f) を構成した。更に, flow の成す順序集合 FP(f) から C(f) への colax functor を構成し, それが分類空間 BFP(f) と BC(f) のホモトピー同値を誘導することを示した。あとは, BFP(f) と元の X がホモトピー同値であることが示されれば, BC(f) と X がホモトピー同値であることが示され, BC(f) が離散モース関数 f を用いて構成された X のモデルとなることが分かる。平成28年度は, その証明を完成させることができた。これで本研究の離散モース理論に関する部分は当初の目的を達成したことになる。この結果は, 共同研究者のVidit Nanda氏と田中康平氏との共著論文にまとめられ, arXiv 上で 1612.08429 として公開されている。また, 学術雑誌にも投稿済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では, 具体的な配置空間について調べることが主体であり, それと平行して必要な離散モース理論の精密化を進める予定であった。しかしながら, 離散モース理論は予想以上に複雑であり, 集中して取り組む必要があると判断し, 配置空間の具体的なモデルを調べることは中断し, 離散モース理論に集中することにした。その結果, 離散モース理論の Cohen-Jones-Segal 版については, 当初予定していた通りの理論を完成することができた。 また, 離散モース理論の研究の過程で, 次のような, その一般化, そして更なる精密化のアイデアも生れた: (1) flow がサイクルを含むような場合への拡張, (2) 構成の自然性, (3) 得られたモデル BC(f) の胞体分割 この内, (1) については, 大学院生の徳野秀尚君との共同研究を推進中である。(2) については, Nanda氏と田中氏との共同研究を, 平成28年度に始めた。(3) については, 配置空間のために構築した cellular stratified space の理論で用いた, acyclic topological category の分類空間の stratificationのアイデアが適用できることが分かったため, そのために acyclic topological category の分類空間について調べ始めたころである。 このように, 配置空間のモデルについては当初の予定通りには進んでいないが, 離散モース理論や配置空間のモデルを構築するための基礎となる cellular stratified space, そしてそこで使われている分類空間の理論が大きく進展したため, おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】に書いたように, 平成28年度に離散モース理論に関する研究で判明した新しい課題が三つある。このうち, 後者二つ, 構成の自然性とモデルの胞体分割については, 実際の配置空間の応用に対しても重要であるため, 今後この二つの課題に取り組む。特に, 最後の胞体分割に関することは, より一般的な acyclic topological category の分類空間の分割の問題として取り組む。 以上のことと並行して, 当初の計画に戻り, 配置空間のモデルの構築について考察する。特に重要な例として, 球面の場合を考察するが, その場合 acyclic topological category の分類空間では不十分であることが, 既に判明している。そこで, 圏の概念を拡張したものを用いて配置空間のモデルを構築することを試みる。具体的には, Jacob Lurie 氏らにより近年理論が整備された∞圏, そしてそれを用いて stratified space に対して定義された exit-path category を用いることを計画している。
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Causes of Carryover |
2017年3月に, Spring school on algebraic topology という集会を開き, 何名かの研究者および大学院生を招いたため, その旅費のための予算として助成金から一定の金額を確保してあったが, 旅費の性格上, 正確な金額が確定するのが直前となり, その結果端数が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には, 北海道大学で大規模な国際研究集会を開催する予定であり, 平成29年度請求額と合わせて使用する。
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Research Products
(5 results)