2017 Fiscal Year Research-status Report
離散モース理論の精密化による配置空間のモデルの構築
Project/Area Number |
15K04870
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
玉木 大 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (10252058)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | stratified space / 分類空間 / 離散モース理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 離散モース理論の精密化による配置空間の新しいモデルを構築することであるが, 前年度までに離散モース理論の精密化の内, 具体的モデルを2圏の分類空間として構築することは完成した。具体的には, 有限正則 CW 複体 X 上の離散モース関数 f に対し, f の臨界胞体を対象とする2圏 C(f) でその分類空間 BC(f) が X とホモトピー同値であるものを構成した。離散モース理論の精密化として, 次に行なうべきことは, BC(f) の胞体分割で胞体が f の臨界胞体と1対1に対応しているものを構成することである。 今年度はその問題を解決するために, BC(f) が非輪状位相圏の分類空間として構成されていることに着目し, 非輪状位相圏の分類空間の分割, 特に対象と1対1に対応する分割について主に研究した。その結果, このような空間の分割のためには, 胞体分割ではなく星状体による分割が必要であることが判明した。そこで, 研究代表者が以前導入した stellar stratified space の概念を一般化し, それを用いて非輪状位相圏の分類空間が対象と1対1に対応する stellar stratified space の構造を持つことを証明した。この結果は, 2017年12月にインドで開催された国際会議で発表された。また, 論文としてまとめこの国際会議のプロシーディングに投稿すると共に, arXiv 上で 1804.11274 として公開中である。 この研究の過程で, このような分類空間の stratification は exit path category と関連が深いことも発見された。本研究のその部分は 米国ハーバード大学の Hiro Lee Tanaka 氏との共同研究であるため, 論文は Tanaka 氏との共著となっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初の目的は離散モース理論を用いて配置空間の組み合せ論的モデルを構成することであったが, その研究の過程で, 予定していなかった研究テーマが浮上してきたため, 配置空間の研究は中断し, 新しい研究テーマに取り組むことにした。その中心となるのは, 非輪状位相圏の分類空間の stratification であり, これを元に2つの新しい研究テーマが生れた。 一つは, stratified space の exit-path category の研究であり, 米国ハーバード大学の Hiro Lee Tanaka 氏との共同研究である。この exit-path category は Robert MacPherson 氏が提唱し, Jacob Lurie 氏などが factorization homology の定式化などに用いて注目されている概念である。一方, stratified space に対しては, 研究代表者による face category という位相圏の定義があり, その関連を調べるという研究テーマが Tanaka 氏から提案された。そこで, 2017年度はその研究に取り組み, 前半を完成させた。 もう一つは, 組み合せ論への応用を目指すものであり, 京都大学岸本大祐氏と英国アバディーン大学 Ran Levi 氏との共同研究である。 両氏とは, 単体的複体の Stanley-Reisner 環の一般化を模索してきたが, 上記の分類空間の stratification を用いると, Stanley-Reisner 環の枠組みである単体的ポセットと単体的複体の対応を大きく拡張できることが分かった。 以上のことから, 研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
離散モース理論の精密化は完成したので, それを用いて当初の目的である配置空間のモデルの構成に取り組む。具体的には, 球面の様々な stratification に対し, それに付随する配置空間の stratification がいつ face category を持つか, そして持つ場合はその分類空間の次元を求め, できるだけ低い次元のモデルを作るためにはどのようにすればよいかを考察する。その後, より一般の空間の場合を調べる。 また, 新しい研究テーマが浮上してきたことにより, 配置空間のモデルの研究に加え, 以下の三つの研究を行なうことする。 一つ目は, 離散モース理論の研究の後継となる研究である。その目的は, 離散モース関数から定義される部分マッチングがサイクルを持たないという条件を外し, サイクルがある部分マッチングに対しても離散モース理論と類似の理論を構築することである。これは, 英国オックスフォード大学と米国高等研究所の Vidit Nanda 氏と信州大学の田中康平氏との共同研究により行なう。 二番目は, stratified space の exit-path category と face category の関係を調べる研究である。2017年度の研究により, 非輪状位相圏の分類空間として得られる stratified space に対して, その exit-path category と face category の関係を調べる研究である。これは米国ハーバード大学の Hiro Lee Tanaka 氏との共同研究として行なう。 二番目は, Stanley-Reisner 環の定義の一般化とその polyhedral product との関係に関する研究である。これは, 京都大学の岸本大祐氏と英国アバディーン大学の Ran Levi 氏との共同研究により行なう。
|
Research Products
(5 results)