2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K04883
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
河野 明 同志社大学, 理工学部, 教授 (00093237)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲージ群 / ホモトピー論 / リー群 / Samelson積 / 非安定K理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲージ群とは主束の自己同型写像のなす位相群であり、ゲージ理論におけるゲージ変換を与えるものである。ゲージ群のホモトピー論の重要性は、変換群としての重要性に加えて、写像空間のホモトピー論やファイバーワイズホモトピー論との密接なつながりからわかる、位相群の群構造との関係にある。特に、写像空間とのつながりからゲージ群のホモトピー型は、主束の構造群の積構造、特に交換子写像から定まるSamelson積に大きく依存することがわかっている。本研究課題ではリー群を構造群とするゲージ群のホモトピー型による分類を目的としている。したがって上記の事実からリー群のSamelson積の決定が重要である。 リー群のホモトピー型は古くからよく研究されており多くのことが解明されている。一方、その積構造に関して知られていることは、古典群の場合ですら非常に少ない。実際、交換子に対応するSamselson積の(非)自明性という基本的な事柄についてすら知られていないことが非常に多い。そこで私はK理論との比較により古典群のSamelson積をとらえる一般的な方法(非安定K理論)を開発し、それにより階数の低いリー群のSamelson積の位数を決定することに成功し、また、その応用として、ゲージ群のホモトピー型の分類結果を得た。そこで本研究課題ではリー群の局所化を考えることにより、高階数の古典群のSamelson積の決定と、例外リー群へ非安定K理論を拡張することにより、例外リー群のSamelson積の決定を行う。またその応用として、これらに関わるゲージ群のホモトピー型の分類を行う。 ゲージ群のAn型に関する岸本大祐氏との共同研究を基礎とするゲージ群の高次ホモトピー構造や、より複雑な多様体上のゲージ群のホモトピー型の分類など、これまでにはなかった方向性の研究でも成果が上がっており、ゲージ群のホモトピー論は深みを増している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲージ群の局所的なホモトピー型の分類で重要となるのは、局所化された構造群のSamelson積である。本研究課題では、構造群がリー群の場合を扱うので、局所化されたリー群のSamelson積である。そこで、リー群の分類に応じて、古典群と例外群の場合に分けて、研究の進捗状況を述べる。 (1)古典群 古典群は各タイプにおいて階数が増加する無限列がある。さらに、階数を無限大にとばすことで、各タイプに応じたK理論が得られる。非安定K理論とは、この性質を利用し、古典群とK理論とを比較することにより、ある種のホモトピー集合を解析する手法であり、特に、Samelson積の計算において非常にパワフルである。非安定K理論は局所化により応用範囲が広がり、古典群がretractibleと呼ばれる場合には、局所化されたSamelson積の計算が可能であることがわかった。 (2)例外型リー群 最近、連携研究者・岸本大祐氏のチームは、非安定K理論のアイディアをベースにして、例外型リー群の表現を用いたSamelson積の計算手法を開発した。そこで用いられた重要なアイディアは、ゲージ群のmod p 分解に関する岸本大祐氏、蔦谷充伸氏との共同研究で行なった、リー群の間の写像のmod p 分解である。これにより、例外型リー群のゲージ群のSamelson積の(非)自明性が多くの場合決定された。現在この計算をより精密化することにより、Samelson積の位数を決定することに着手しており、いくつかの場合に成功している。その応用として、例外型リー群を構造群とするゲージ群の局所的なホモトピー型の分類が得られる。具体的な分類に関しては、これまで構造群が古典型であるゲージ群のみ扱われてきたので、この結果は先行結果とは、結果そのものに加え、手法も一線を画すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、ゲージ群のホモトピー型の研究を構造群であるリー群のSamelson積の解析を通して行なってきた。この基本方針は今後も変わらない。 (1)例外型リー群のSamelson積 連携研究者・岸本大祐氏のチームにより開発された手法を用いて、例外型リー群のSamelson積の位数の計算を継続する。その応用として、quasi-regularと呼ばれる場合に局所化されたゲージ群のホモトピー型を決定する。この決定後、残るケースは例外型リー群のホモロジーがトーションをもつ極端に難しい場合か、E7, p=5,7かE8, p=7の場合のみである。 (2)retractileでない場合 古典型、例外型の場合の局所化されたSamelson積の決定をこれまで行なってきたが、そのどちらの場合もretractileと呼ばれるもの、つまり、一回懸垂すると、ホモロジーを生成する部分複体へとレトラクトするようなリー群についてのみ考えてきた。その大きな理由は、リー群そのものは次元が大きすぎるが、ホモロジーを生成する部分複体の次元は比較的低く、その構造も単純だからである。一方、Millerによる古典群の安定分解に関する結果によると、十分な階数懸垂すると、古典群はホモロジーを生成する部分複体にレトラクトすることがわかる。今後は、まず特殊ユニタリー群の場合にretractileでない中で最も階数が低いものを考え、どの程度懸垂するとホモロジーを生成する部分複体へレトラクトするのかを、局所化することで状況を単純化して考える。また例外型の場合もE7, p=7の場合にmod p 分解に現れる空間を分析する。これらの場合に加え、F4, p=3のmod p 分解に現れるHarper空間と呼ばれる空間に関するSamelson積を、その安定分解を通して評価する。
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Causes of Carryover |
予定していた謝金の支出をせず、繰り越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の研究計画にのっとり旅費に使用するほか、研究協力者招聘の旅費、もしくは謝金に支出する。
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Research Products
(1 results)