2017 Fiscal Year Research-status Report
有界解析関数の研究とその解析関数空間上の作用素論への応用
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15K04895
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
泉池 敬司 新潟大学, 自然科学系, フェロー (80120963)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 修一 日本工業大学, 工学部, 准教授 (20265367)
泉池 耕平 山口大学, 教育学部, 准教授 (90451434)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有界解析関数空間 / 2変数ハーデイ空間 / 解析関数空間 / 不変部分空間 / 不変部分空間のランク / テープリッツ作用素 / デスク環 / 荷重合成作用素 |
Outline of Annual Research Achievements |
[1] 2変数ハーディ空間に関して、不変部分空間Mの構造の研究について次の結果を得た。1)有限ルージン型不変部分空間Mの直交補空間をNとする。Nの上部の空間をQとする。このときQのランクを決定し、それはNのランクより小さいことを証明した。その上、真に小さくなるようなMの存在を示した。2)不変部分空間がスプリテイングであることの定義を与え、それはヒルベルト・シュミットであることを証明した。その中にYangの条件を満たさないものが存在することを示した。3)Mがz-wを含むとき、Mのフリンジ作用素がフレッドホルム作用素になるときの特徴付けをし、そのときの指数が-1であることを示した。4)Mの直交補空間をNとし、内部函数θに対してθMの直交補空間をNθとする。NθのランクはNのランクより大きくその差は2以下であることを示した。その上で全てのθに対して、ランクが変わらないとき、また全てのθに対して、ランクが変わるときのMをそれぞれ決定した。 [2] 荷重合成作用素に関しては、次の結果を得た。1)デスク環はバーグマン空間の荷重合成作用素の像の可算個の合併集合の中には含まれないことを示した。2)QA空間上の、荷重合成作用素のパス連結成分の位相構造は、デスク環よりH∞空間上の荷重合成作用素のパス連結成分の位相構造に近いことを示した。3)有界調和関数空間上の荷重合成作用素のパス連結成分の位相構造を決定した。 [3] 1)2変数ハーディ空間において、ホモジイニアス型の有界関数をシンボルに持つテープリッツ作用素の核が不変部分空間となるときがあり、またそうでないときもあるが、どのような関係があるのかをY. Chan氏及びY. Lee氏との共同研究で解明した。2)1変数のハーディ空間において、コーエン・ガラルドは作用素の不変部分空間問題に関連して3つの問題を提出した。その内の2つに解答を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)2変数ハーディ空間の不変部分空間Mに対して、1次元の摂動を与えたとき、ランクの関係式が得られ、また内部関数θに対して、MとθMのそれぞれの直交補空間のランクの関係式を得ることができた。それによりMに変形を加えたとき、ランクの変化を研究するための糸口が得られた。 2)スプリティングである不変部分空間は性質の良いヒルベルト・シュミットになることが分かった。ヒルベルト・シュミットになるためのYangの条件が知られているが、その条件を満たさなくてもヒルベルト・シュミットになることも分かり不変部分空間の研究を深めることができた。 3)Mがz-wを含むとき、Mのフリンジ作用素がフレッドホルム作用素になるときの特徴付けをし、そのときの指数が-1であることを示した。 4)有限ルージン型不変部分空間Mの直交補空間をNとする。Nの上部の空間をQとする。このときQのランクを決定し、それはNのランクより小さいことが分かった。その上、真に小さくなるようなMの存在も分かり今後の研究の礎を築くことができた。 5)H∞に関連する空間の荷重合成作用素の位相構造は、この研究を通して完成させることができた。 6)2変数ハーディ空間において、ホモジイニアス型の有界関数をシンボルの持つテープリッツ作用素の核が不変部分空間となるときがあり、またそうでないときもあるが、どのような関係があるのかをY. Chan氏及びY. Lee氏との共同研究で解明した。不変部分空間と作用素論との新たな接点を開拓できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)有限ルージン型不変部分空間において、フリンジ作用素に関するランクをS. Luo氏及び泉池(耕)との共同研究で決定できている。その直交補空間のランクも決定できると考えている。その延長として、無限ルージン型不変部分空間において、フリンジ作用素に関するランク及び直交補空間のランクを共同研究で決定することを目指す。 2)2変数ハーディ空間において、ハンケル作用素の核はいつでも不変部分空間になる。しかし任意の不変部分空間がハンケル作用素の核になるとは限らない。ハンケル作用素の核となる不変部分空間を決定することは意義深いと考える。ホモジイニアス型の有界関数をシンボルに持つハンケル作用素の核は特別な多項式で生成される不変部分空間となることが証明でき、さらに研究を進めたい。 3)2変数ハーディ空間の中にバーグマン空間が埋め込まれていることはよく知られている事実である。z-wのn乗で生成される不変部分空間の中に重み付きバーグマン空間が埋め込まれていると予想している。n=1, 2のときはそれを示すことができるが、その他のときも証明したい。 4)Y. Chan氏及びY. Lee氏との共同研究を更に進めて、n変数ハーディ空間で、0でない関数に共役テープリッツ作用素のベキを作用させてできる列のノルムがすべて発散するときのシンボルを決定したい。
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Causes of Carryover |
1)「ルージン型不変部分のランクを決定する問題」の解決に向けて取り組んでいる。それは今までの研究を包括するもので、大掛かりな体系的な研究で長編の論文になりつつある。期間を延長して、その研究を完成させたい。その上で、その一般化を共同研究者の S. Luo 氏及び泉池(耕)と取り組みたい。 2)プサンで開催予定であった日中韓による国際会議が延長になった。2018年中に再開催される予定であり、そこで講演を行いたい。
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Research Products
(26 results)