2018 Fiscal Year Research-status Report
時間変数の係数をもつ線形偏微分方程式の発散級数解のボレル総和法とその応用
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15K04898
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
市延 邦夫 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (20434417)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | k総和法 / 漸近解析 / 発散級数解 / 偏微分方程式 / 初期値問題 / q差分微分方程式 / q超幾何級数 |
Outline of Annual Research Achievements |
今までは正規型方程式を扱ってきたが、上智大学の田原秀敏氏と非正規型方程式に対して研究を行った。具体的には、局所正則な初期値に対して、時間変数係数の非正規型高階線形偏微分方程式の初期値問題の発散級数解がk-総和可能である為の十分条件を、初期値の大域的増大度によって与えた。ただし、方程式に対して定義した不変量(モディファイド・オーダー)が1の場合を扱った。正規型に限らない一般の方程式を扱うことで、より見通しが良く洗練された結果を得た。田原氏との共著としてこの結果をまとめて次年度発表する予定である。
また、時間微分をq-差分化したq-差分微分方程式の初期値問題を扱った。このq-差分微分方程式のq→1の極限は我々が扱う偏微分方程式である。ある典型的な定数係数線形q-差分微分方程式の初期値問題に現れる形式冪級数解に対して、その収束性の必要十分条件、発散する場合に形式解の漸近解の存在、そして、漸近解の一意性、すなわち、形式解のk-総和可能性の必要十分条件を初期値に対する大域的増大度によって特徴付けた。形式解のk-総和可能性の問題は愛知教育大学大学院生の安達駿弥氏との共同研究である。q→1の時に得られる偏微分方程式の形式解に対して、上記結果と同様な結果がすでに1999年に三宅正武氏によって得られているが、漸近解の存在以外の結果はq→1の時に一致を見なかった。このq-差分微分方程式に対する問題を現在考えている問題の考察の一助とするべく着手したが、q→1の時に結果が移行しない現象を得た。さらに、上記の結果は、q-差分微分方程式に現れる発散級数解を扱う全ての先行研究には見られない現象でもあった。
これらの研究について連携研究者のMichalik氏と日本で議論を重ねた。また、イタリア・パドバ大学、ポーランド・バナッハ数学研究センターや京都大学で行われた研究集会にて講演し専門家との意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に比べて扱う方程式を高階化させたが、モディファイド・オーダーに課される条件の拡張が出来ておらず、特殊な条件(モディファイド・オーダー=1)の下でしか着手できていない。しかし、扱う方程式が非正規型高階にまで拡張され、より見通しが良い洗練された結果を得ている。また応用として、ある典型的なq-差分微分方程式の形式解の収束性の特徴付け、形式解が発散する場合の漸近解の存在、そして形式解のk総和可能性の特徴付けを与えた。q-差分微分方程式はq→1の極限で偏微分方程式に帰着するので、現在の問題に対して取り組むアプローチの幅が広がったと考えることが出来る。以上より、全体的にはおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通りに進めていく予定である。今までに得られた結果を基にして、モディファイド・オーダーの値にかかわらず、時間変数の係数を持つ高階線形偏微分方程式の初期値問題に対する発散級数解のk総和可能性を考える。特に、定理を得るために必要な仮定が本質的なものであるかを吟味する。また、k総和可能性を考えるにあたり重要な二つの不変量であるジュブレイ位数とモディファイド・オーダーとの関連を見定める。 また、k総和法の拡張である多重総和法の範疇での主研究への取り組みを進めていきたい。
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