2018 Fiscal Year Research-status Report
グラスマン多様体上の 超幾何関数,q-超幾何 関数と非線形特殊関数 の研究
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15K04903
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
木村 弘信 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (40161575)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 行列積分型超幾何関数 / holonomic系 / Painleve方程式 / 量子Painleve系 / 準直交多項式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は,当初グラスマン多様体上の超幾何函数(一般超幾何函数)の満たす微分方程式系の大域的研究,特にモノドロミー表現やストークス現象の研究を進めることであった。一昨年度から,多変量解析の研究に重要な役割を果たす行列積分で定義される超幾何関数について研究をおこなっている. Grassmann多様体G(2,N)上の一般化された超幾何関数のうち,G(2,4)の場合に現れるものは,本質的にGauss, Kummer, Bessel, Hermite-Weber, Airy関数などの古典的超幾何関数である.その行列積分版を考えて行列積分を独立変数行列の固有値x1,x2,…,xn と積分変数行列の固有値の積分にGaussの場合も含めて書き直した.Gauss, Kummer, Besselの行列版の場合はそれらを特徴付けるholonomic系が知られており,その解空間の次元は2n である.これらのholonomic系はxi=xj に特異点を持つことが知られている. これらの特異点の共通部分x1=x2=…=xnに制限して得られる関数は,上記古典的超幾何関数の積分表示の被積分関数をweightとする準直交多項式に付随するmomentを成分とするHankel行列式であることが分かった.これはmonodromy保存変形によって得られるPainleve方程式という非線形方程式の特殊解を与える. 行列積分版超幾何関数の被積分関数に積分変数行列の固有多項式|z-X|を掛けて積分して得られる関数は,zの多項式となる.これは共形場理論に関連して現れる量子Painleve系の多項式解であることが,Gaussの行列版の場合も含めて分かった.Hermite-Weber,Airyの行列版の場合のholonomic系はまだ得られていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題をより発展させるため、一般超幾何函数の研究を一時的に留保して、行列積分で定義される超幾何函数の研究を昨年に引き続き行っている。多変量解析の研究に重要な役割を果たし、可積分系との関連も明らかになってきた行列積分で定義される超幾何函数に興味を持ち、その方面の基礎的な知識の習得,特にItzykson-Zuber積分公式の類似についてその初等的な証明の研究を行ったからである。
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Strategy for Future Research Activity |
多変量解析の研究に重要な役割を持ち、可積分系との関連も明らかになってきた行列積分で定義される超幾何関数は重要な研究対象である.その方面の研究を深めていきたい。 古典的な超幾何関数の中で,Hermite-Weber,Airy関数の場合にそのみたすholonomic系は得られていない.それを導出し,解空間の次元や特異点集合への制限したときの,方程式がどの様に分岐するか,これらが特殊解を与えるKdV方程式等の非線形化積分系との関連を明らかする.特に古典的なGaussの超幾何関数をGrassmann多様体G(2,N)の行列積分版への拡張,それを特徴付けるholonomic系の導出とその構造の研究を進めたい.そのために,共形場理論や非線形化積分系の専門家との情報交換や,計算代数システムの活用など積極的に行いたい.
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Causes of Carryover |
本研究の今年度の計画で,予定していポーランドにおける学会への参加,共同研究を行うためのモンゴルからの研究者の招聘を,研究代表者の他業務による多忙のために中止せざるを得なかったのが大きな理由である.他業務は公的機関ての重要なもので,そのために20回ほどの出張を行なった.また,研究課題における研究対象に関する知識の取得と計算実験に時間を取られ,研究遂行が順調に進まなかった事がもう一つの理由である.
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