2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K04908
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山崎 晋 日本大学, 理工学部, 准教授 (00349953)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | D加群 / 境界値問題 / 超局所解析 / 佐藤超函数 / 近接輪体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は,以下の結果を得た. (1) 複素領域に於いて,複素超曲面の法バンドル(normal bundle)上に,新たな作用素の層を函手を用いた代数的手法で定義出来た.この作用素の層は,解析的な無限階偏微分作用素の拡大環であり,解析的無限階偏微分作用素の特殊化と看做される.更に田原秀敏が Fuchs 型偏微分作用素.Fuchs-Volevich 系の解析に用いるため導入した,或る種の形式的無限階偏微分微分作用素も含む.又,座標系を用いた具体的表示も得られる. (2) (1)で述べた作用素を用いて,一般の D 加群に対して,我々の意味の近接輪体(near-by cycle)を函手的に定義した.この対象は考える D 加群が正則特殊化可能(regular-specializable)と呼ばれるクラスならば,柏原正樹,Y. Laurent 等に依る近接輪体と一致する.又,M. S. Baouendi-C. Goulaouic の意味の m 階 Fuchs 型偏微分作用素,或いは田原の意味の m 階 Fuchs-Volevich 系に対しては,解析的無限階偏微分作用素の m 個の直和となる事が証明出来る. (3) Y. Laurent-T. Monteiro Fernandes の意味の Fuchs 型偏微分方程式系に対し,(2)で述べた近接輪体を用いて複素領域に於ける境界値問題を定式化し,一意可解性定理を得た.これは,正則特殊化可能の場合の Y. Laurent の結果の拡張である.この結果の実領域への応用として,Fuchs 型偏微分方程式系の佐藤超函数解に対して境界値写像を定義し,解の一意性定理を得た.更に,或る種の双曲性条件(near-hyperbolicity と呼ばれる)の下で,境界値問題の一意可解性定理を確立出来た. 現在,以上の結果を纏めた論文を準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,当初より目標としていた,佐藤超函数の範疇での Fuchs 型偏微分方程式系に対する境界値問題の定式化が得られ,境界値問題の解の一意性,及び或る種の双曲性条件(near-hyperbolicity)の下での可解性定理を得る事が出来たので,順調であるといえる. 今回得られた佐藤超函数解に対する境界値写像は,田原秀敏,大阿久俊則に依る, Fuchs 型偏微分作用素,Fuchs-Volevich 系に対する超函数解の先行研究,及び正則特殊化可能系に対する Y. Laurent-T. Monteiro Fernandes の結果を Fuchs 型偏微分方程式系の場合に拡張したものであり,特に非特性条件の下では,小松彦三郎-河合隆裕,P. Schapira の定めた境界値を与え,正則特殊化可能の場合は T. Monteiro Fernandes が定めた境界値と一致する事が判る.従って,この意味で従来知られていた超函数の境界値写像の一般化を与えている.特に非特性の場合,(弱)双曲型ならば near-hyperbolic が判るので,我々の結果は,非特性(弱)双曲型偏微分方程式系に対する超函数解の一意性定理も含んでいる.又,Fuchs 型偏微分作用素に対する大阿久俊則の研究を踏まえ,超局所的な境界値写像の定式化も得る事が出来た.証明方法としては, (1) 新たな作用素の層を導入し,この作用素による変換論を構築する事で,複素領域に於ける一意可解性定理を,二つの層(より詳しくは導来圏の対象)の間の擬同型という形で示す. (2) (1)の擬同型に函手を施し,柏原-Schapira に依る超局所台(microsupport)の理論を応用する事で実領域に於ける超函数解に対する結果を得る. というもので,代数解析学,超局所解析学で常套の手法である.
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Strategy for Future Research Activity |
2016 年度は研究計画通り,我々の立場からの消滅輪体(vanishing cycle)の定義,及び非正則度の研究を行う.特に,2015 年度の研究では,消滅輪体については手つかずであったので,この点に関して最初に研究する. 作用素の変換論の立場では,柏原正樹-河合隆裕の第 2 超局所解析学の研究で示唆される通り,解析的な無限階擬微分作用素(pseudodifferential operator of infinite order)を用いれば Fuchs 型偏微分方程式系の標準形を得る事が出来て,これに依って Fuchs 型偏微分方程式系の消滅輪体が定義出来ると思われるのだが,解析的無限階擬微分作用素そのままでは,作用素のクラスとしては,やや広すぎる.そこで我々の目的に沿う程度の作用素のクラスを見いだし,そのクラスの作用素を用いて Fuchs 型偏微分方程式系の消滅輪体を定義するのが目標である. 更に近接輪体との関連等,従来,柏原正樹,Y. Laurent 等に依って得られている種々の函手的性質を証明する事を目指す. 又,我々の近接輪体の有限性に関する結果は未だ不充分であるので,平行して,この点の問題も考察する. 可能であれば,Fuchs 型 D 加群に対して,非正則度(irregularity)を適切に定義し,対応する近接輪体及び消滅輪体を定義する事も視野に入れ,研究を進めたい.その際,分布(distribution),Gevrey超分布(Gevrey ultradistribution),或いは無限階可微分函数, Gevrey 函数に対する境界値問題を考察する為には,無限階作用素がこれらの(超)函数族には作用しないので,非正則度に応じた狭い作用素のクラスで,これら(超)函数族に作用し,変換論が確立出来るものを定義する必要がある.この点も考察する.
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Causes of Carryover |
2015年度は,幸運な事に,研究開始当初のアイディアに従って研究を進めた所,最初に考えていた以上に順調に結果を証明する事が出来た.従って,本年度は他の研究者との研究連絡をあまり積極的に行わず,その為,必要に応じ,個人で当該の研究を遂行する事に時間をかけた.更に今年度に得られた結果を纏め,投稿論文を作成する為の準備に,予想外に多くの時間を費やした.その為,個人研究の時間を,結果的に当初の計画よりもかなり多く取る事となり,研究連絡,研究集会出席等の為の出張に使用される旅費が,学内の出張費で間に合った.又,或る程度,結果が纏まる迄,時間がかかってしまい,講演を積極的に行わなかった事もあり,特に旅費を計上しなかった.その結果,次年度使用額が生じてしまった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度の様に,個人研究が順調に進行し,あまり研究連絡をせずに済む事は極めて稀であり,2016年度は必要に応じ,多くの研究連絡を行いたい. 実際「今後の研究方策」で具体的に述べた幾つかの課題の研究を遂行する為には,特に,連携研究者の青木貴史氏(近畿大学)と解析的側面に関し,連携研究者の本多尚文氏(北海道大学)と代数解析的側面に関し,それぞれ議論を重ねつつ研究を進める必要があると考える.又,研究結果の公表に関しても,講演等を行いたいと考えている.従って,2016年度は,2015年度分も併せて旅費を使用する事を計画している.
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Research Products
(3 results)