2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04923
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
佐久間 紀佳 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (70610187)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自由確率論 / 無限分解可能分布 / ポーランド / デンマーク / レヴィ過程 / ランダム行列 |
Outline of Annual Research Achievements |
作用素値確率論に自由自己分解可能分布を拡張することを考える中で, その解析的道具を見ている際に自由確率論における自己分解可能分布の類似である自由自己分解可能性についてガウス分布がその例であることの証明法として解析的な道具による特徴付けが無いかということに気がついた. そのことの証明をデンマークオーフス大学のThorbjornsen氏と北海道大学の長谷部氏と共同研究を行い, ガウス分布の自由自己分解可能性を示せた。これはガウス分布が自由無限分解であることを示したBelinschi, Bozejko, Lehner, Speicherらの結果を大きく深めるものである. また他の古典的に有名な分布が自由自己分解可能性をもつかという問題を開いた. 特に安定分布のクラスがどのようになっているか等はとても興味深い問題である. またその結果を用いてMlowtkowskiとFuss-Catalan数をモーメントとして持つ分布の自己分解可能性について共同研究を行い、そのことを成否を確認している. 単峰性について非可換確率論の枠組みで多変数や作用素値での単峰性を作用素ノルムを使って定義できないかということの研究に着手しはじめた. 具体的には例えば半円要素を要素に持つ作用素値の非可換確率変数の分布は常に単峰になっていると言えるかなどである. これはいわばガウス分布の単峰性を非可換の世界でどれだけ拡張していくことができるのかということである. また平成27年度の研究実績についての発表をカナダのバンフで開催された自由確率論の専門家が集まる国際会議で行った. また自由自己分解可能性についての研究発表をポーランドのベンドレヴォで行われた非可換調和解析の研究会で発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい幾つかの結果が見つかっていることがその理由である. これまでの研究成果を2つの国際会議で発表し研究交流を広く図れた点もある. 新しい結果の一つ目は, 自由確率論おける自己分解可能性の類似自由自己分解可能性についての研究が大きく前進したことである. これにガウス分布という新しい具体例を加えることに成功した。この研究で自由自己分解可能性を分布の解析的変換による関数論的特徴づけを与えた. そのなかで解析的な道具の取扱についてはその手法を共同研究などを通してかなり広げることができた. また行列の要素間に従属性を持つようなランダム行列についての結果をまとめたものを投稿し, 国際専門雑誌での掲載が確定した. またこれらの研究についての2本の論文を著名な国際専門雑誌へ投稿できた. また信州大学や鹿児島大学で行われたセミナーでこの分野の最新結果についてのサーベイ講演を行い確率論に関連の深い幾何や代数などの専門とする研究者とも討議ができ, 活発な交流ができたと思う.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のなかで作用措置だけでなくスカラー値の話題についても新しいことが見えてきた. このようなことはこの分野の著名な研究者Speicherらの研究でも起きており, 作用素値自由確率論を見るということで自由確率論のそのものの見方が非常に良くなる. この意味でもスカラー値での今までよりも深い結果を常に導こうとしていくやり方はとても大事であると考え, この姿勢を貫く. また解析的な道具をある程度見直した中で, 作用素値複合ポアソン分布の研究もサイズの小さいものであればある程度具体的に計算できうる可能性を感じたので継続して来年度も同様のことに挑戦していく. 特に, Benaych-Georgesらによる自由無限分解可能分布をそのサイズ極限スペクトル分布としてもつランダム行列モデルのような, 与えられたレヴィ測度をもつような作用素値自由無限分解可能分布を実現するランダム行列模型の構成を目指す. 研究環境の整備はある程度できているので, 今年度は他の研究者との交流により積極的に取り組む. 日本国内では常に共同研究を行っている京都大学のBenoit Collinsや北海道大学の長谷部高広, 御茶ノ水大学の吉田裕亮氏らと頻繁に意見交換や共同研究を行い研究が加速するようにする. また応用先として量子情報理論を考え, その情報収集及び研究打ち合わせのため2017年9月から12月に行われるIHPのQuantum Informationについてのイベントに前半パート(10月末まで)参加することとする. さらにメキシコのVictor Perez AbreuやOctavio Arizmendiらとの打ち合わせのため, MexicoのCimatを11月に訪問する. これらの海外研究者らとの意見交換を通して, 積極的に作用素値自由確率論を通したランダム行列とその応用を目指す.
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Causes of Carryover |
平成29年度にフランスで量子情報理論のイベントが行われることになり, そこで研究計画で予定していた研究者らと研究打ち合わせが可能になり, 平成28年度計画していた欧州への出張を取りやめ、平成29年度に出張することとなったため. .
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度にメキシコでランダム行列理論のイベントが行われることになり, そこで研究計画で予定していた研究者らと研究打ち合わせが可能になったため, メキシコへの旅費にその予算に回す.
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Research Products
(11 results)