2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04925
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
谷口 雅彦 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (50108974)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | タイヒミュラー空間 / フラクタル構造 / 擬等角変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
特定の点配置を力学系から生じるフラクタル集合のフラクタル構造と呼ぶとき、フラクタル構造の変型空間としての新しいタイヒミュラー空間の概念を導入すること、すなわちフラクタル構造のタイヒミュラー空間の定式化が本研究の最初の目標であったが、まずそのための基礎研究として奈良女子大学大学院生の夏目阿佑子氏と共同で、古典的無限次元表現空間上の基本的な力学系についての超巡回性とカオス性との関連およびそれらの判定条件を解析し、興味深い成果を得た。その成果は国際的な専門誌に投稿済みである。 次に本研究の第一目標については、昨年来の研究成果の積み重ねを踏まえ平成27年8月24日から28日まで九州産業大学で行われた国際研究集会において多くの専門家との議論や情報交換を行った結果、ひとまず満足できる形での「フラクタル構造のタイヒミュラー空間」の定式化を完成することができた。まだ細部には改良の余地があるが、その成果をひとまずまとめた速報は同国際研究集会の Proceedings へ研究論文として投稿され現在査読が行われている。 また幾何学的座標系を用いた力学系的タイヒミュラー空間のコンパクト化については先行する科研費の主たる研究目標でもあったが、平成27年度に Rational functions with nodes という題目で Journal of Analysis (Special Volume)から査読付き論文として公刊された。この成果は今後の研究に大きく寄与するであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一目標であったフラクタル構造のタイヒミュラー空間の定式化については、平成27年8月24日から28日まで九州産業大学で行われた国際研究集会において多くの専門家との議論や情報交換を行った結果、ひとまず満足できる形での「フラクタル構造のタイヒミュラー空間」の定式化を完成することができた。さらにその成果を取りまとめた速報は同国際研究集会の Proceedings へ研究論文として投稿され現在査読が行われている。すなわち、本研究の第一目標は当初の計画通り平成27年度中にほぼ達成することができたと言ってよい。 さらに古典的無限次元表現空間上の基本的な力学系についての超巡回性とカオス性との関連およびそれらの判定条件を解析し興味深い成果を得た。その成果をまとめた論文を国際的な専門誌に投稿済みである。これは予想外の成果と言える。 次に幾何学的座標系を用いた力学系的タイヒミュラー空間のコンパクト化については、先行する科研費の主たる研究目標でもあったが、平成27年度中に査読付き論文として Journal of Analysis (Special Volume) から公刊された。これも本研究にとって重要な成果である。 またタイヒミュラー空間論の Ahlfors による古典的名著を翻訳し「擬等角写像講義」として丸善出版から出版できた。来年度以降の本研究に大いに役立つと思われる。 以上から、本研究は「当初の計画以上に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第一目標であったフラクタル構造のタイヒミュラー空間の定式化についてはひとまずの決着を見たので、今後はクライン群や正則関数の反復合成系さらに自己相似IFS(反復関数系)などのいくつかの代表的な複素力学系に付随するフラクタル集合に対して標準的な「フラクタル構造のタイヒミュラー空間」を導入し、それらの幾何学的大域座標の導入を試みる。これらの古典的代表例についてさえ、具体的な幾何学的表現空間での部分領域としての「安定領域」の幾何学的形状についてはほとんど解明されていないのが現状である。したがってこの目標については、古典的に研究されてきた有限次元複素力学系に関連するフラクタル集合の場合ですら、フラクタル構造の導入と付随するタイヒミュラー空間に対する新たな視点からの研究が不可欠である。 上記の目標の遂行においては、力学系的研究では計算実験が欠かせないため、今までにも多数の共同研究を進めてきた防衛大学校の藤村雅代氏にも協力者として数式処理・数値計算の遂行を要請する予定である。 上記の目標が一定程度達成された段階で、遅くとも平成29年度には最終目標である無限次元の場合の「フラクタル構造のタイヒミュラー空間」に対する基本構造の解析を開始する。この研究における主要な対象は、今まで複素力学系分野ではほとんど研究されてこなかった無限次元のパラメータ空間を持つ力学系であり、特に無限次元の配置空間なども対象となりえるので、今年度の古典的無限次元表現空間の研究成果が大いに寄与するであろうと期待される。
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Research Products
(2 results)