2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K04926
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
瀬戸 道生 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 准教授 (30398953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須田 庄 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (30710206)
細川 卓也 茨城大学, 工学部, 准教授 (90553579)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 再生核ヒルベルト空間 / グラフ準同型写像 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.グラフ準同型写像を再生核ヒルベルト空間の枠組みで扱うための道具を準備した グラフから再生核ヒルベルト空間が構成できることはよく知られている。本研究ではこの観点をさらに推し進め、グラフ準同型写像を再生核ヒルベルト空間の間に作用する線型作用素として表現し、そのスペクトル解析を展開する。27年度の研究により、グラフ準同型写像が単射な場合、擬直交補空間の理論が応用できることが判明した。その副産物として、擬直交補空間の新しい解釈に気づき、さらにフレームの理論との関連にも気づいた。以上に述べたことを重み付き無限グラフにまで拡げ、いくつかの結果とともに論文としてまとめ、専門誌に出版した。また、この研究で必要となった擬直交補空間に関する知識をまとめたサーベイを執筆し、数理解析研究所講究録に掲載した。今年度の研究により、単射なグラフ準同型写像が本研究課題における適切な研究対象であることが認識でき、28年度以降の研究の足場が固まった。
2.グラフ理論への応用 同じ頂点集合をもつ二つの有限グラフを考える。この二つのグラフの間に包含関係があるとき、包含写像は明らかに単射な準同型写像を導く。このようにして、1で述べたアイデアをグラフの包含に対し応用できる。この設定では対応する二つの再生核の差が半正定値になる。研究分担者である須田氏(愛知教育大学)との共同研究により、この半正定値行列の核の次元を再生核ヒルベルト空間の理論を用いて調べた。この研究で得られた結果は論文としてまとめ専門誌に投稿、現在査読中である。なお、この論文で考察した半正定値行列は関数解析学的にいくつかの解釈をもつ素性のよいものであり、28年度以降も続けて研究する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の1で述べたように、本研究の基本アイデアを重み付き無限グラフにまでその対象を拡げ、いくつかの結果とともにまとめた論文を専門誌に出版することができた。また、本研究で重要な役割を演じる擬直交補空間の基礎的な理論についてまとめたサーベイを数理解析研究所講究録に掲載した。従って、27年度の研究により本研究の理論面の足場を固めることができたと考えられる。また、研究実績の概要の2で述べたように、本研究のアイデアをグラフ理論に還元する結果も得ることができ、さらに、28年度以降にも調査を継続すべき研究対象を見つけることができた。 このように、本研究課題における理論と応用の両方面に進展があったため、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.グラフから再生核が構成でき、この対応は一対一である。再生核は関数であるから、二つのグラフに対する演算を再生核の世界で行うことにより、グラフに対する様々な演算が可能になると考えられる。再生核の差については27年度の研究で応用も含め基礎を固めることができた。28年度は他の演算についての考察を進める。特に、シューア積の意味での商を考え、それが再び半正定値になる場合、グラフ理論的に何が起こるかを調べる。シューア積での商は再生核の理論としては引き戻しで扱える対象であるので、まずはその帰結をグラフ理論へ翻訳することを考える。ただし、計算機による実験によれば、商を考える際に分母に0が現れる場合もあるようであり、適切なクラス(又は問題)にグラフを制限する必要があると思われる。この研究で得られた結果は日本数学会やグラフ理論の関連する研究集会で発表し、グラフ理論の専門家の意見を伺う予定である。
2.連続パラメータをもったグラフ準同型写像の族によるグラフの時間発展の研究を進める。この研究では必然的に重み付きのグラフの族を考えることになる。28年度は Vasyunin-Nikolskii の論文でまとめられている擬直交積分の理論の本研究への応用を再検討する。擬直交積分の理論のグラフ理論への応用を考えると、頂点の動きを制御する微分方程式が現れるため、グラフを複素平面に埋め込む等の処置が必要になる。27年度は頂点を固定した場合を考え(擬直交積分の理論としては自明な場合に相当する)、それが研究実績の概要の2で述べた研究につながった。この研究は研究分担者である細川氏(茨城大学)との共同研究になる予定である。
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Causes of Carryover |
本研究課題申請時、研究代表者は島根大学に所属しており、松江市を出発地と想定し旅費の使用予定額を算定した。しかし、研究代表者が平成27年10月に島根大学から防衛大学校に異動したことにより、地理的な条件に変更が生じ、27年度の旅費の使用額が当初の想定額を下回ることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年12月にインドで開催される国際研究集会に出席する予定である。ここで、今回生じた差額を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)