2019 Fiscal Year Research-status Report
実解析に基づくウェーブレットおよび変動指数をもつ関数空間の研究
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15K04928
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
出耒 光夫 東京都市大学, 共通教育部, 准教授 (80507179)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 変動指数 / モジュラー不等式 / John-Nirenbergの不等式 / Herz空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績の1つが、複素数平面上におけるいくつかの作用素に対するモジュラー不等式の研究です。複素数平面におけるBergman射影、調和射影などの作用素に対し、特性関数の像の各点評価を与えました。その評価を応用し、もしこれらの作用素が変動指数を伴うモジュラー不等式を満たすならば、変動指数は定数となってしまうことを示しました。すなわち、指数定数の枠組みでは同値であるはずのモジュラー不等式とノルム不等式について、差異が生じる具体例を与えることができました。 2つ目の研究実績が、ボールBanach関数空間におけるJohn-Nirenbergの不等式です。元々のJohn-Nirenbergの不等式は、通常のLebesgue空間においてBMO関数のノルムを評価するものでした。今年度の研究では、通常のLebesgue空間だけでなく変動指数Lebesgue空間やMorrey空間など実解析における重要な関数空間も含むボールBanach関数空間の枠組みで、John-Nirenbergの不等式を一般化しました。その証明のために、Muckenhouptの荷重をもつ重み付き関数空間からボールBanach関数空間への補外定理を用いました。 3つ目の研究実績が、2つの変動指数型Muckenhouptの荷重をもつHerz空間の研究です。荷重を2つもつ複雑な変動指数Herz空間を、適切な条件下で、より簡単な臨界指数のHerz空間によって特徴付けました。この特徴付けを応用し、この関数空間における特異積分とBMO関数の交換子積の有界性を証明しました。今回の手法は、特異積分そのもの、分数積分、分数積分とBMO関数の交換子積の有界性にも応用が可能です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの研究実績のいずれについても、今後のさらなる研究につながる成果となりました。 複素数平面上におけるいくつかの作用素に対するモジュラー不等式の研究において、モジュラー不等式が成立しないいくつかの作用素に共通した性質として、特性関数の像の適切な各点評価を満たすことがわかりました。この評価の発見は、モジュラー不等式を満たさない作用素の統一理論、逆に満たすような作用素の性質の解明に繋がります。 また、ボールBanach関数空間におけるJohn-Nirenbergの不等式を証明したことにより、様々な関数空間におけるBMO関数の評価が可能となりました。今後、実解析学や偏微分方程式論において、John-Nirenbergの不等式が登場する様々な場面での応用の幅が広がることになります。 2つの変動指数型Muckenhouptの荷重をもつHerz空間の研究を通じて、指数や荷重による一般化でHerz空間が複雑となっても、各指数に関する適切な条件下で、既知のHerz空間による特徴付けが可能となることが明らかになりました。その適切な条件が強過ぎると応用の幅が狭くなるので、いかに弱くできるかも重要となります。今回の研究で、その特徴付けを用いて、複雑なHerz空間における基本的な作用素の有界性を示す手法を確立しました。今後、双対性やウェーブレットによる特徴付けと基底の構成、Hardy型のHerz空間の場合の研究へ繋がる成果が得られました。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた研究成果について、国内外の研究集会で発表する機会が十分ありませんでした。今後論文の共著者とともに研究成果の発表に取り組み、他分野での具体的な応用を目指していきます。特に、John-Nirenbergの不等式は偏微分方程式論においても、BMO関数を評価する際に重要な役割を果たします。ボールBanach関数空間という広い枠組みでこの不等式を証明できたことにより、様々な関数空間での応用の可能性が広がりました。この結果を実際の偏微分方程式の問題への応用に繋げていきたいと思います。 また、Herz空間の研究については、様々な臨界指数の場合において、重み付き変動指数Herz空間上の作用素の有界性を追究していきたいと思います。指数が変動指数になること、さらに荷重を付けることでHerz空間の構造は複雑となり、今年度までの研究ではまだその一部が解明されたに過ぎません。 複素数平面上における作用素の研究について、これまではモジュラー不等式が成立しないような作用素を個別に考えてきました。まずは個別の作用素をまとめる統一理論の構築に取り組みます。また逆に、モジュラー不等式を満たすような意味のある作用素の研究にも取り組みます。こうしたモジュラー不等式を通した考察から、まだ十分開拓されていない変動指数をもつ正則関数の関数空間の研究を深めていきます。これまでに研究を続けてきたウェーブレット理論の考え方を応用し、正則関数の関数空間において優れた基底を与える関数系の構成を目指します。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により、予定していた研究集会、学会が中止となりました。これに伴い、当初進める予定であった研究打ち合わせや研究発表などができなくなりました。 今年度は、昨年度新型コロナの影響でできなかった研究のために使用する計画です。
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Research Products
(5 results)