2016 Fiscal Year Research-status Report
サブラプラシアンに対する確率微分幾何学の体系的展開
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15K04931
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷口 説男 九州大学, 基幹教育院, 教授 (70155208)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 確率微分方程式 / マリアバン解析 / サブリーマン多様体 / ラプラシアン / CR-多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)サブラプラシアンの典型例であるCR-多様体上のKohnラプラシアンに付随する拡散過程のEells-Elworthy-Malliavinの手法(EEM手法と称す)による構成とその応用に関する成果をまとめた論文が日本数学会誌で出版された. 2)稲浜譲氏(九州大学)との共同研究によって,EEM手法の一般化である,確率微分方程式の解の多様体間の沈めこみ写像の像として得られる確率過程の密度関数のオフダイアゴナルにおける短時間漸近挙動について新たな成果を得た.これまでのリーマン多様体に対して行われていた確率解析的手法をラフパス理論を用いて見直すことにより,より明快な漸近挙動に現れる特異多様体の理解が可能となっている.さらにCR-球面での詳細な考察により,リーマン多様体とは異なる新たな具体例を構築した.これらの成果を論文にまとめ,国際誌に投稿中である. 3)稲浜譲氏との別の共同研究により,サブリーマン多様体上のキャノニカルラプラシアンに対する拡散過程のオンダイアゴナルでの短時間漸近展開について調べている.すでにキャノニカルサブラプラシアンに付随する拡散過程を構成するためのEEM法の拡張には成功し,漸近展開の一般的な表示は得た.より具体的なサブリーマン多様体での漸近挙動のトップ項の決定にむけて,3Dコンタクト多様体,CR-多様体での計算を進めている. 4)ステップ2のサブリーマン多様体の考察に際し,n次元ブラウン運動とそれが定めるn(n-1)/2-組のレヴィの確率面積との同時分布の具体的な表示を見出した.この過程で,定数磁場を持つシュレディンガー作用素に付随する熱核の具体形も確率解析的手法により得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
サブリーマン多様体上のキャノニカルラプラシアンに付随する拡散過程を構成するためのEells-Elworthy-Malliavinの手法を確立できた.これは,CR-多様体上のTanaka-Webster接続に基づく特殊な拡散過程の構成法を乗り越えた,より一般のサブリーマン多様体上の確率幾何学を展開するための基礎となる成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
サブリーマン多様体上のキャノニカルラプラシアンに付随する拡散過程のオンダイアゴナルでの短時間漸近挙動の研究を完成する.とくにトップ項を具体的に求める計算を完成する.さらにこの拡散過程の基本的な性質(爆発問題,再帰性など),またそれらの具体例についての研究を行う.
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Research Products
(2 results)