2015 Fiscal Year Research-status Report
数式処理的手法による有理関数の複素力学的性質の解析
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15K04943
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
藤村 雅代 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 総合教育学群, 准教授 (00531758)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 解析学 / 数式処理 / 複素力学系 / 有理関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、複素力学系の理論へ応用するため、有理関数のメビウス共役類からなるモジュライ空間に力学的不変量による表現を導入することである。加えて、有理関数を共通キーワードとする研究として、ブラシュケ積の幾何学的性質などの古典的な複素解析・複素幾何分野の問題を扱うことである。さらに、研究に数式処理システムを用いることで、数式処理システムを用いた新たな解法を開発することも研究目的の一つである。 有理関数のモジュライ空間の研究に関しては、自身による多項式の場合の研究を発展させる形で今まで研究を進めてきており、奈良女子大の谷口氏との共同研究によるノード付き有理関数に関する研究成果が本年度に発刊されたところである。しかし、まだ有理関数の退化現象の詳細は解明できていない。そのため、本研究の初年度である平成27年度には退化現象を詳しく調べるために主に計算実験を行った。 一方、ブラシュケ積がもつ幾何学的な性質の研究に関しては、近年 Gorkin らを中心に numerical range との対応などの研究が活発に進められているが、本研究においては幾何学的な性質に着目し、予想を確認するため数式処理システムを用いた描画実験などを中心に行った。 ブラシュケ積が持つ幾何学的な性質についての研究は、本補助金で購入した計算機により数式処理システムを用いた計算実験や動画を用いた描画実験が順調に進み、興味深い現象をいくつか見いだすことができ、予想につなげられた。さらに、これらの一部を数学的に証明することにも成功した。この成果については 2015年8月に九州で開催された The 23rd International Conference on Finite or Infinite Dimensional Complex Analysis and Applications において口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有理関数の退化現象は多項式の場合より複雑であり不動点や特異点の衝突によって生じることがわかっている。しかし、退化現象の全容の解明のためには、さらなる計算実験が必要であり、解決にはまだ時間がかかると思われる。 一方、ブラシュケ積が持つ幾何学的な性質を見つける研究は、古典的な分野にも関わらず新たな性質を見つけるという、研究の見通しを立てづらいものであったが、計算機による動的描画実験を効果的に行い現象を可視化することで、新たな性質を見いだすことができた。さらに、数学的な問題に置き換え、数式処理システムを利用した計算により、それが一般に成立することを確認し、一部を数学的に証明することができるなど、当初の想定以上に順調に研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ブラシュケ積がもつ幾何学的な性質についての研究では、動画による可視化や数式処理システムによる実験から現象のみが観察されているものの、その数学的な予想が証明できていない部分が残っている。まずは、そこの解決を優先して研究を進めたい。時間的な制約もあるので、場合によってはブラシュケ積の研究に集中し、有理関数の退化現象の実験は一旦中断することも考えている。
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Causes of Carryover |
残額4千円弱は振込手数料の差額や入札差額による累積から生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は翌年度の物品費に繰入れることとする。しかし、額が少額のため使用計画は当初のままとし、PCの付属品の購入、福岡大への出張を始めとした成果報告や研究打ち合わせの旅費に本研究費を使用する予定である。
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