2016 Fiscal Year Research-status Report
非線形ディラック方程式に対するモース・フレアー理論
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15K04947
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
磯部 健志 東京工業大学, 理学院, 准教授 (10262255)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ディラック方程式 / モース・フレアーホモロジー / ディラック・測地線 / ルレイ・セールスペクトル系列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度から引き続き非線形ディラック方程式に対するモース・フレアー理論を研究した。昨年度の時点では未完成だった非線形項が漸近的線形の場合のモース・フレアーホモロジーの構成と計算を、今年度の研究で最終的に完成することができた。昨年度までの研究で完成させていた非線形項が優線形の場合のホモロジーとは異なり、漸近的線形の場合は、非線形項をディラック作用素の固有空間へ制限して得られる関数の無限遠方における振る舞いによってホモロジーは決まることを発見した。優線形の場合との結果と合わせると、最終的にディラック方程式に対するモース・フレアーホモロジーを非線形項のある種のホモトピー不変量として定義することができたことになる。また、このホモロジーの具体的な計算結果の応用として、非線形ディラック方程式の解の存在定理を与えることができた。 また、非線形ディラック方程式と並行して A. Maalaoui 氏と共同で研究をおこなっていたディラック・測地線のモース・フレアーホモロジーの構成に関しては、横断正則性に関する技術的な部分を除いて、ホモロジーの構成およびそのホモロジーに収束するルレイ・セール型のスペクトル系列の存在を証明した。このことから、スピノルに関する非線形項が3次あるいは優3次の場合のディラック・測地線のモース・フレアーホモロジーの消滅定理が従う。更に、このホモロジーの消滅定理から、ディラック・測地線の存在定理を幾つか証明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主要な部分の一つであった、非線形ディラック方程式に対するモース・フレアーホモロジーの構成とその計算は完成させることができた。もう一つの主要な部分である、ディラック・測地線に対するモース・フレアーホモロジーの構成と計算に関しては、昨年度行った横断正則性の証明の一部に見落としがあり、今年度の研究でこの証明の修復に取り組んだが、現時点でも修正は完成していない。しかし、この技術的な部分を除くと、目標にしていたルレイ・セールのスペクトル系列の構成とホモロジーの計算はうまく遂行できたため、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ディラック・測地線のモース・ホモロジーの構成に関しては、引き続き横断正則性の証明の修復に取り組む予定である。 また、これまでのディラック方程式およびディラック・測地線の研究で開発した証明技術が他のヒルベルト多様体上の変分問題にも適用できることが少しづつわかってきている。これらの問題は、当初の研究目的としてはとりあげていなかったのもではあるが、次年度以降、研究対象として取り組む予定である。
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