2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04949
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
藤田 安啓 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (10209067)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 対数型のソボレフの不等式 / リプシッツ定数 / 下からの評価 / 放物型方程式 / ハミルトン-ヤコビ方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、対数型のソボレフの不等式の深化と応用として、この不等式の偏微分方程式への応用に全力を注いだ。具体的には、この不等式から、リプシッツ連続な函数のリプシッツ定数を下から定数で抑える不等式をまず導いた。次に、この新たに導いた不等式の偏微分方程式への応用として、放物型方程式とハミルトン-ヤコビ方程式に対するコーシー問題を考えた。初期値が高々1次の増大度を持つとき、これらの解がリプシッツ正則効果を持つことから、これらの解のリプシッツ定数を下から定数で抑えることとそれから得られる解の情報についての解釈への応用を考えた。 最初に放物型方程式に対するコーシー問題の解に対しては、F.Flandoli, M.Gubinelli and E.Priola (2010)とA.Porretta and E.Priola (2013)で初期値がヘルダー連続の時の解のリプシッツ定数の上からの評価が既に知られている。そこで、上で説明した新たに導いた不等式を応用して解のリプシッツ定数の下からの評価を導くと、上からの評価と時間無限大での時間の減衰の次数が完全に一致することが分かった。これは、彼らの結果が最も遅い場合の時間の減衰の次数を与えていることを証明していることになる。 次にハミルトン-ヤコビ方程式に対するコーシー問題の解に対しては、初期値がヘルダー連続の時の解のリプシッツ定数の上からの評価と、上で説明した新たに導いた不等式を応用して下からの評価を導くと、時間無限大での時間の減衰の次数が完全に一致することが分かった。これは、この上からの評価が最も遅い場合の時間の減衰の次数を与えていることを証明していることになる。 以上より、新たに得られた対数型のソボレフの不等式の深化としての不等式が偏微分方程式の解のリプシッツ正則効果の評価に有効に働くことが十分満足の行く形で示すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、対数型のソボレフの不等式の深化として、この不等式の偏微分方程式への応用を考えることを主な目的にしてきた。それが、十分満足の行く形で証明できたことはおおむね順調に進展していると言えると思う。しかしながら、できればこの完成を昨年中に済ませて今頃は次の課題の研究に進むというスケジュールを昨年度の初めに抱いていたので、その意味ではそのスケジュールから約1~2か月遅延している。現在、論文にまとめて投稿する準備に入っているが、投稿は今年度の4月の末頃になりそうである。結果は出来てはいるが、かなりの大部な論文になりそうで書き直しに連日余念がない状況である。
また、これに伴い今年度予定していたスケジュールにも若干の遅延が生じるかもしれない。それを補うべく最大限の努力をすると同時に、次の結果を出すべく今後も努力を続けたい。一方、結果は出来ているので今年度は国内、国外を問わず多くの場を活用して発表するようにもしたい。
以上、時間の遅延はあるが, 研究はおおむね順調に進展していると言って過言でない状況であり、引き続き努力を続けて行きたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは上に述べた論文の投稿が第一の目標となる。予定としては、 今月末の投稿を考えているが,若干早まりそうである。それが終わったら、この結果について多くの場を活用して発表する準備にも入りたい。
一方、次に目指すものとして、対数的に凹(いわゆる log-concave)な函数についての評価を対数型のソボレフの不等式から導きたい。これは、昨年度得られた結果と並行して昨年度進めていたが、十分満足の行く結果には未だ至っていない。問題は、不等式を導く際の対象とする関数のクラスに対する条件をどこまで厳しくすると同時に、どのような応用に対して導くかという接点をはっきりとさせることである。これを完成させるのが次の目標である。 具体的な研究方法としては、昨年度私がフランスのリヨン第一大学に訪問した Ivan Gentil 教授を今年度も訪問して研究の理解を図ると同時に共同研究にも着手したい。彼は、昨年の秋に富山大と東京工業大を訪問しており、共同研究を始める下地は出来ていると考える。可能であれば、彼を再度日本に呼んでじっくりと研究のための討論を重ねたい。彼と私の共通の興味は、ハミルトン-ヤコビ方程式から導かれる種々の不等式の関連を明らかにするこであり、上に述べた対数的に凹な函数はその媒体として重要な役割を果たすものと思われる。また、この結果は偏微分方程式の解の凸性や確率論にも深くかかわっているので、偏微分方程式の解の凸性を調べている研究者や確率論の研究者とも積極的に交わっていきたい。 このために、私自身の努力は当然として、一方多くの研究会に出席して情報を集め、また関連する研究者の訪問等を繰り返して、研究の推進を図りたい。
|