2015 Fiscal Year Research-status Report
非線形項の影響が長時間にわたる双曲型波動方程式系の解の最大存在時間と漸近挙動
Project/Area Number |
15K04955
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
肥田野 久二男 三重大学, 教育学部, 教授 (00285090)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 和義 北海道科学大学, 工学部, 准教授 (20316243)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 波動方程式 / 最大存在時間 / 時間大域解 / 退化条件 / wave equation / lifespan / global solution / null condition |
Outline of Annual Research Achievements |
個々では零解を不安定にしない冪乗型非線形項の和が,波動方程式の解の最大存在時間(ライフスパン)に及ぼす影響(combined effect)の研究を続けた.とくに未知関数の1階導関数の2乗の項たちの係数が退化条件(null condition)を満たすときに, 上述のcombined effectは現れるのか否かを調べた. 具体的には空間次元が2のときに,「(u_t)の2乗とuの積」という項と,「|u|のq乗」という項の和を非線形項にもつ波動方程式の初期値問題のライフスパンが興味の出発点であった.初期値はなめらかで十分に小さいとする.驚くことに,qがストラウス指数より大きくてもcombined effectの影響でライフスパンは直感で予想されるよりも非常に短くなることが2014年のHan-Zhouの優れた結果から分かる.そこで(u_t)の2乗をnull conditionが満たされる「(u_t)の2乗-|\nabla u|の2乗」に置き換える.null conditionのおかげで,もはやcombined effectは現れず,時間大域解が存在するはずと見込んで計算を進めた. 証明にはKlainermanのベクトル場の方法を用いた.また,Ho"rmanderによる非斉次波動方程式の解の精密な評価式も援用した。さらにストラウス予想を空間次元2,3,4の場合に解決できる「微分のオーダーが1/2-1/qの斉次ソボレフ空間上でKlainermanの方法を用いる」という自身のかつての発想も役立ち,上述の問題を肯定的に解決した. 空間3次元でも類似の問題があるが,ここでの方法では|u|のq乗という項の「uの関数としてのなめらかさの低さ」という難点を克服できなかった.しかし「tangential derivativesの有効活用」というLindblad-Rodnianski, Lindblad-Nakamura-Soggeによる方法も取り入れるとこの難点は克服される可能性があり次年度への課題とした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
``combined effect''が退化条件(null condition)の下では消滅することを,空間次元が2のときに示すことができたことは,第一歩としてはよい成果と言える.空間次元が3のときの問題をどのように扱うかが次の課題であるが,幸いにも「複数の伝播速度を持つ準線形連立波動方程式系の初期値問題の,非線形項がnull conditionを満たし,初期値のなめらかさがあまり高くない場合での時間大域解の存在」という別の研究課題で有効性が認められる方法がここでの課題の解決にも役立ちそうで,研究の一層の進展が見込まれる.このような理由で,研究は概ね順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題には長年にわたり共同研究を行ってきた研究分担者と海外の研究協力者が参画している.意見を交換しながら研究を進めることにより,課題を克服して成果を上げていく所存である.
|
Causes of Carryover |
1,800円の次年度使用額が発生した.これは当該年度の研究に直接経費が大変に順調に,しかも有効に使用された証ともいえる.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定よりも次年度に研究が格段に進みそうなので,次年度使用額1,800円を当初の予定よりも多めにノート,ボールペン,資料整理に用いるファールケース等の購入に充てる.
|
Research Products
(8 results)