2016 Fiscal Year Research-status Report
非線形項の影響が長時間にわたる双曲型波動方程式系の解の最大存在時間と漸近挙動
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15K04955
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
肥田野 久二男 三重大学, 教育学部, 教授 (00285090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 和義 北海道科学大学, 工学部, 准教授 (20316243)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | null condition / 波動方程式 / 初期値問題 / 時間大域解 |
Outline of Annual Research Achievements |
null conditionをみたす2次の非線形項とみたさない2次の非線形項をもつような,空間3次元における準線形波動方程式系の初期値問題に対する時間大域解の一意存在を研究した.1986年にChristodoulouとKlainermanにより独立に,空間3次元における準線形波動方程式系の初期値問題が,小さくなめらかで空間遠方で速く減衰する初期値に対して時間大域解が一意的に存在するための,2次の非線形項に関する十分条件が発見された.彼らはこの条件をnull conditionと命名し,彼らの論文はこの方面の研究を活性化させた。null conditionは,一般的な3次の非線形項ももつようなもとでの2次の項に対する十分条件であったが,「3次の非線形項が一切なく」「準線形ではなく半線形」の連立系に対しては,2次の非線形項に対する上述の条件は必要条件ではないことがAlinhacによって2006年に指摘された.今回の研究では,Alinhacの「準線形ではなく半線形」という制約を緩めることが出来ないかを考察した.線形化された変数係数双曲型作用素に対してAlinhacが課した条件よりも弱い条件のもとで,彼の``ghost weight''の方法は役立つことに気がつき,その弱い条件のもとでエネルギー型評価式を導くことが出来た.このエネルギー型評価式により,coneに沿った接線微分に対する重み付きノルムの評価が可能となる.null conditionをみたす2次の項をこの接線微分を使って上から押さえる工夫をAlinhac, Lindblad-Rodnianski, Lindblad-Nakamura-Soggeの論文で習い,この工夫を取り入れることにより,上述の「準線形ではなく半線形」という制約を緩めることに成功した.Alinhacの課した厳しい制約を緩めたことにより本研究の意義がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は上述の準線形波動方程式系でもなく,またAlinhacが考察した半線形波動方程式系でもないような型に分類される半線形波動方程式系の初期値問題が小さくなめらかな初期値に対して時間大域解が存在するための条件を考察していた.そこでの研究で,時間大域解の存在を示すことが困難な型に分類された連立方程式系が,上述の「3次の非線形項が一切なく」という条件と密接に関わっているのではないかと気がつき,Alinhacの興味深い定理と優れた方法を見直すことにした.幸いにもその過程で,上述の通りに当初は計画していなかった方面でも研究成果をあげることが出来たので,当初の計画以上に進展することになった.
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通りに「準線形ではなく半線形」というAlinhacの制約を緩めることに成功した.一方で,ChristodoulouとKlainermanの論文での研究成果と比較するとき,「3次の非線形項が一切なく」という制約はいかにも厳しい.この制約が単に技術的な理由なのか,それとも何か本質的に効いてきているのかを調べることには意味があると思われるので,平成29年度はこの方面を調べてみようと考えている.
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Causes of Carryover |
台風のために8月に予定していた札幌訪問が11月に延期になった。訪問時期の違いのために、航空券代に大変な差があった。また当初の予定よりも11月の訪問では滞在日数が少なくなった。このような理由で4万数千円の次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2007年度に科研費で購入したパソコンが、Windows Vistaのサポート終了により2017年度には研究発表時に使用できなくなった。これを解決するため、研究発表時に使用する持ち運び型ノートパソコンを購入する。そのためにこの次年度使用額を使いたい。
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Research Products
(9 results)