2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04956
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大鍛治 隆司 京都大学, 理学研究科, 准教授 (20160426)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ベッセル関数 / 平滑化効果 / 極限吸収原理 / ディラック作用素 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者大鍛治隆司は、Hubert Kalf氏(ミュンヘン大学)・ 山田修宣氏(立命館大学)との共同研究において、ベッセル(Bessel)関数に関連するある積分の評価に関する結果とその応用として、数理物理学における最も重要な作用素の一つである一般n次元におけるディラック(Dirac)作用素H=α・p+mβ(m≧0)に対する一様な極限吸収原理について考察を行った。 ベッセル関数に関する評価については、数学解析の様々な局面に現れる基本的不等式に応用することが出来る重要な結果である。特に、シュレーディンガー作用素などの偏微分作用素の解の平滑化効果や全空間で定義された関数を球面へ制限して得られるトレース作用素の評価式に現れる最良定数の具体的評価を知ることが可能となる。 その応用のひとつとして、一般n次元(n≧2)におけるディラック(Dirac)作用素のレゾルベントに関する重み付き不等式である一様な極限吸収原理について考察を行った。即ちそのレゾルベント(H-z)^{-1}について、実数でない複素変数zの実部が閾値(z=+m, -m)に等しい場合も含む一様評価について考察を行い、粒子の質量mが零である場合(massless case)とそうでない場合(massive case)について、許容される重み関数(複素位相)のクラスが異なることを明らかにした。実際、massiveの場合の方がmasslessの場合に比べてより狭い範囲の重み関数に対してしか成り立たないことがわかった。また、一般次元における考察では、3次元以上では結果は同様であるが、2次元では少し弱い結果しか得ることが出来なかった。これらの結果の改良ならびに得られた知見のさらなる応用発展が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベッセル関数に関連する積分の具体的評価式とその応用として一般次元ディラック作用素のレゾルベントに関する重み付き不等式である「一様極限吸収原理」を示すことが出来た。これらの結果を国際誌に投稿中であり、レフェリーの意見に従って修正して再提出している事による。
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Strategy for Future Research Activity |
種々の作用素に対する重み付き不等式を通じて複素位相法の観点からそれらのスペクトル問題や逆問題について考察を行い特異性を許容するより広いクラスの重み付き不等式の開発推進に取り組んでゆく。特にポテンシャル項を持つディラック作用素についても考察を行う。
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Causes of Carryover |
「超局所解析と古典解析」研究集会の開催にあたり、予定していた参加者が都合により参加できなくなりその分の旅費があまった。次年度は良く調整した上で参加者を増やして開催する。
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