2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K04963
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
飯田 雅人 宮崎大学, 工学教育研究部, 教授 (00242264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二宮 広和 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (90251610)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非線形解析 / 反応拡散系 / 漸近解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、反応拡散系における、角遷移層と呼ばれる特異性を含む解と、複数種個体群の多段階侵入を表す動的分布パターンの解に対し、それらの理論的裏付けとして、漸近解の理論的な構築と挙動の解析を目指す。平成27年度の実績は以下のとおり。 1.多種協調拡散系の多段階進入型の形状を表す特解が大域的に存在することを理論的に保証するために、多段階侵入形状の構成単位と見なせる劣解の構成方法を検討した。既存の研究では、多種協調系の正不変領域を巧みに利用して漸近解を構成していたため、多段階侵入形状の解の理論的な確立は、全種の拡散係数が一致するという特殊な場合に限られていた。本研究では、正不変領域を使わない方法を検討するために、楕円型境界値問題の解の挙動を力学系の観点から解析した結果、空間次元が1の場合ではあるが、各拡散係数が一致しなくても多段階侵入形状の構成単位として劣解を構成する手掛かりが得られた。 2.反応拡散系に対し、拡散に比べて反応が急速に進む条件のもとで現れる特徴的な解を調べる手法として有望視されつつある「反応拡散近似」について、総合講演を行なった(応用数学勉強会2015)。この講演の準備として、反応拡散近似に対する種々のアイデアと基本的な証明手順を整理・検討した結果、角遷移層や内部遷移層を伴う解の挙動が、「反応平衡集合」(拡散項を無視した常微分方程式系のアトラクタ)の近傍のダイナミクスに集約されていることが明確になった。この事実に基づき、角遷移層の挙動に関する詳細な解析を平成28年度以降に進める。 3.角遷移層を伴う漸近解の構成単位の候補として、さまざまな楕円型方程式に対する空間次元が1の場合の全域解の挙動を力学系の観点から解析した。現状では、角遷移層を伴う漸近解の構成にはまだ至ってないが、解析結果の応用として、興奮場で特徴的に見られる動的パターンに対して理論的な裏付けが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多段階侵入形状の構成単位と見なせる劣解を、正不変領域に頼らずに、構成する手掛かりが得られた;角遷移層等を伴う解の挙動が、「反応平衡集合」の近傍のダイナミクスに集約されていることが明らかになった;興奮場で特徴的に見られる動的パターンの理論的な裏付けが得られた:以上3点の実績から、研究目的達成に向けておおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討結果を基に、多種協調拡散系に対し、それぞれの種の拡散係数が一致しない場合についても、空間の次元を1として多段階進入形状の劣解の構成を完了させる。一方、必要に応じて数値計算も併用しながら、多段階侵入として起こり得るさまざまな動的分布パターンの形式的な分類を試みる。また、解の摂動に対するスペクトル解析についての既存の方法を検討し、反応拡散系における角遷移層を伴う漸近解の構成への応用を試みる。これらを順調に進めるため、反応拡散系の解析が盛んな関東・関西・福岡など国内の非線形解析の諸研究室との研究連絡を適宜行なうことで、計画遂行のアイデアの修正・改善を図る。
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Causes of Carryover |
本年度購入を予定していたデスクトップ型パソコンについては、本研究推進に効果的な機能を備えた機種が平成28年度に発売予定のため、使用するアプリケーション・ソフトウェアとともに、購入を次年度へ延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度購入を控えたデスクトップ型パソコンとアプリケーション・ソフトウェアを次年度に購入し、研究効率をアップさせる。
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Research Products
(3 results)