2016 Fiscal Year Research-status Report
複素領域での非線型偏微分方程式の解とその特異点の研究
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15K04966
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
田原 秀敏 上智大学, 理工学部, 教授 (60101028)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 偏微分方程式 / 特異点 / 形式解 / 漸近解析 / q-差分方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、時間変数についてq-差分, 空間変数について偏微分をもつq-差分偏微分方程式の発散形式解のボレル総和法については, 昨年度の研究で基本的な形のものについては解決されていた。今年度は, この理論をより分かり易い形に整理した。また, その内容を京都大学数理解析研究所でのRIMS共同研究(6月)やポルトガル(リスボン、9月)での国際研究集会で発表した。 2、1階の totally characteristic な非線型偏微分方程式で, 空間変数について確定特異点をもつような方程式について, 特異解の構成を行った。線型部分のある係数が負の場合には, 既に知られた解の一意性の結果(Tahara, Tokyo J. Math., 2008)と合わせることにより, 構成した解ですべての特異解が尽くされることが示された。結果として, 線型部分のある係数が負の場合には, すべての特異解の決定に成功したことになる。議論は古典的な漸近解析を駆使して論じた。条件を満たさないケースには, 多くの解を構成することは出来るが, それらがすべての特異解を尽くしているかどうかは, 今の所, 不明である。 3、A. Lastra教授(Alcala大)と共同で, 高階の totally characteristic な非線型偏微分方程式で, 空間変数について不確定特異点をもつ方程式について, 形式解のMaillet型定理の研究を行った。多くの例を計算した。空間変数についてのGevrey指数に関してはある程度の良い見通しが得られたが, 時間変数のGevrey指数については五里霧中のままである。1階の方程式の場合は、Chen-Luo-Tahara (Ann. Inst. Fourier, 2001)で既に解決されているので、これをモデルにして高階の見通しを立てることは、来年度の研究課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は主として totally characteristic な非線型偏微分方程式の研究を行った。条件付きで1階の場合に限定されているとはいえ, すべての特異解の決定に成功したのは大きな成果である。高階の場合には具体的な成果はないものの, 全体としては順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度、2年目の研究は順調に進んだ。しかし、高階の totally characteristic な方程式で空間変数について不確定特異点をもつ場合は未解決に残った。この問題の重要性に鑑みて, 3年目は集中的にこの問題に取り組みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度の研究費の使用は順調であったけれど, 昨年度の未使用額の大半がそのまま残る結果となった。研究の全体を考えて, 無理な予算執行を行うよりも次年度の執行にまわした方がより効果的であると判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
必要な備品, 消耗品(主として学術図書), 研究打ち合わせ, 研究成果発表のための旅費に使用する予定。
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