Outline of Annual Research Achievements |
1.時間変数についてq-差分, 空間変数について偏微分をもつq-差分偏微分方程式の発散級数解のボレル総和法については, 一昨年度と昨年度の研究で最終的な形で解決された。本年度は, この結果を論文にまとめて, Funkcialaj Ekvacioj に投稿した。改訂を経た上で3月にアクセプトされた。 2.線形偏微分方程式の発散級数解のボレル総和法の研究は, Miyake, Balser, Ouchi, Ichinobe 達により, 精力的な研究がなされてきた。この内, 非コワレスキー型とよばれる線形偏微分方程式の場合について, 多くの興味深い例を計算した。結果として, 方程式の係数が空間変数に依存している場合に, 従来の常識を覆すような極めて特異な反例の構成に成功した。これらについては,10月に京都大学数理解析研究所で開かれた研究集会で発表した。 3.昨年度に引き続き, A. Lastra 氏(Alcala大)との共同で, 高階の totally characteristic な非線型偏微分方程式で, 空間変数について不確定特異点をもつ方程式について, 発散級数解の Maillet 型定理の研究を行った。昨年度の研究までで, 空間変数についての Gevrey指数に関しては, ある程度の良い見とおしが得られていた。今年度の研究で, 時間変数と空間変数の両方についての良い Gevrey指数の計算に成功した。方程式の係数がすべて非負の場合には, 得られた Gevrey指数が最良のものであることの証明にも成功した。この結果は, 発散級数解を漸近展開とする真の解の構成問題を解く上で重要な役割を果たすと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は主として, totally characteristic な非線型偏微分方程式で空間変数について不確定特異点をもつものの研究を行った。高階の場合に発散級数解の Gevrey指数の決定に成功したのは大きな成果である。全体として, 順調に進んでいると言える。
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Causes of Carryover |
(理由)予定していた外国出張を取り止めたことと, 前年度に未使用額が残っていたために, 今年度も使い残しが出る結果となった。研究の全体を考えて, 無理な予算執行を行なうよりも次年度の執行にまわした方がより効果的であると判断した。 (使用計画)必要な備品, 消耗品(主として学術図書), 研究打ち合わせ・研究発表のための旅費に使用する予定。
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