2015 Fiscal Year Research-status Report
準線形シュレディンガー方程式におけるラグランジュ乗数問題と安定性解析への応用
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15K04970
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
渡辺 達也 京都産業大学, 理学部, 准教授 (60549749)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 非線形解析 / 変分問題 / 準線形方程式 / 安定性解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プラズマ物理学においてsuperfluid film方程式として導出される準線形シュレディンガー方程式において、定常問題として得られる準線形楕円型方程式の解構造(一意性・多重性・形状・漸近的プロファイルなど)を解析した。今年度の具体的な研究実績は以下の通りである。パラメータが十分小さい場合の漸近的一意性:本研究では非線形項の指数が優臨界の場合に、エネルギー最小解の漸近的一意性を考察した。当研究内容は足達慎二(静岡大学)氏との共同研究として、『Asymptotic uniqueness of ground states for a class of quasilinear Schrodinger equations with H^1-supercritical exponent』の題名で学術雑誌「Journal of Differential Equations」に掲載された。パラメータの大きさによらない一意性:本研究では双対変分構造を与える写像の性質を詳しく解析することで、パラメータや指数の制限なしに正値解の一意性に関する結果を得た。本研究内容は足達慎二氏・柴田将敬氏との共同研究として学術雑誌に投稿中である。また、ボルドー大学のMathieu Colin氏と共同で、磁場と相互作用する粒子の運動を記述するシュレディンガー・マックスウェル方程式やクラインゴルドン・マックスウェル方程式における初期値問題の可解性、定常問題のエネルギー最小解の存在および定在波解の安定性に関する研究を行った。さらにヴェローナ大学のMarco Squassina氏と準線形熱方程式の時間大域解の漸近挙動に関する結果も得た。最後にカルロス第3大学のPablo Alvarez-Caudevilla氏、バーリ大学のAlessio Pomponio氏とも現在共同研究を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の全体的な目標は、定常問題として得られる準線形楕円型方程式において、制限付き変分問題を考察した際に現れるラグランジュ乗数のパラメータに関する依存性(単調性・一意性)を解析することであるが、今年度の研究によってパラメータや指数の大きさによらない一意性の結果を得ることが出来、解構造の分類に大きな進歩が得られた。したがって、研究計画は順調に達成されていると考えている。さらに新たに海外の共同研究者が増え、熱方程式の大域解の漸近挙動やクラインゴルドン・マックスウェル方程式の初期値問題など、これまで行っていなかった研究も始めることが出来た。科研費については在外研究に従事していたため執行していない。以上の理由により、研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに得られた結果を下に、ラグランジュ乗数のパラメータ依存性の解析を行う。今後も前年度に引き続き、足達慎二氏・柴田将敬氏を研究協力者として研究を行う。本研究を推進するため、研究協力者と定期的に研究打ち合せを行う。海外の共同研究者とはメールを通じて連絡を取り合うが、余裕があれば日本への招へい、共同研究者が所属する大学への渡航も行いたい。また、国内の研究集会に積極的に参加し、様々な研究者と積極的に情報交換を行う。同時に、前年度と同様にKSU非線形解析セミナーを主催し、情報収集および共同研究のきっかけを作っていきたい。申請者は本研究内容であるシュレディンガー方程式の他にも、波動方程式の周期解の研究・弾性膜の変形を記述する楕円型微分方程式の解構造についての研究も行っている。問題意識などはそれぞれ異なるが、共に変分法をベースにした研究を行っている。さらに、前者の研究では初期値問題に活用できる iteration を用いることがあり、後者の研究では分岐理論を利用することがある。したがって、本研究内容だけでなく他の問題にも取り組むことで、研究計画を実行するための知識を得るといったアプローチも行う。
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Causes of Carryover |
1年間フランスのボルドー大学にて在外研究に従事していたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度の「発展方程式若手セミナー」の幹事を務めることになったため、講演者への旅費援助を行う。また、アメリカ数学会主催の国際会議"11-th AIMS International Conference on Dynamical Systems, Differential Equations and Applications"にも参加する。また前年度に出来なかったノート型パソコンの購入と同時に、研究計画を実行するための知識を得るため、解析学関係書籍を購入する。
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Research Products
(1 results)