2015 Fiscal Year Research-status Report
閉路探索問題に基づいた曲面上のグラフの本型埋め込みに関する研究
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15K04975
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中本 敦浩 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 准教授 (20314445)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | グラフ / 曲面 / 本型埋め込み / ページ数 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフが与えられたとき,そのある種の複雑度を測る尺度として,グラフの種数とページ数がある.本研究の目的は,その2つの尺度が互いにどのように関係を持つかについて明らかにすることである.特にグラフの種数を固定し,そのページ数を評価したいと考える. これまでに,平面グラフのページ数は4以下であることが示されているが,4ページを必要とする平面グラフが存在するかどうかは知られておらず,今後の研究が待たれる.一方,トーラスグラフが7ページ埋め込み可能であることが知られている.これらに関連する問題に対して,私たちのこれまでの研究により,向きつけ可能曲面の局所平面グラフが7ページ埋め込み可能であること,トーラス上の2部グラフが5ページ埋め込み可能であること,さらに,射影平面グラフが9ページ埋め込み可能であることを証明した.1番目の成果については,一般に種数をあげるとグラフのページ数の上界も上がることが知られているのに対して,局所平面性を仮定すると,種数に依らない上界が存在することを指摘するものであり,たいへんに興味深い.また,2番目については,2部グラフ性の扱い方にアイデアがあり,今後も同様の手法により,他の問題も攻略できる可能性がある.3番目にについては,向きつけ不可能な曲面上のグラフのページ数を評価した最初の研究であり,今後の研究を一気に加速するものとなるだろう. 今後は,これまでの研究成果に関連する様々な問題を解決してゆきたいと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の欄にも記入したが,本補助金を申請するための計画書に記載した目標について,その半分程度はすでに解決した.今後は残り半分の難解な部分への取り組みとなる.そのための研究の方向性を以下の「今後の研究の推進方策等」で述べる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの私たちの研究により,トーラス上の2部グラフのページ数,射影平面グラフのページ数,向きつけ可能曲面のグラフのページ数に関する結果を得た.今後はこれまでに得た知見をもとに,研究成果を拡張することになるが,特に,グラフの連結度とページ数の関係を考察したいと考えている. 例えば,平面グラフのページ数については最良の上界の決定は未解決のままとなっているが,グラフの4ー連結性を仮定すれば,そのグラフはハミルトン閉路を持ち,その構造がグラフの辺集合の効率的な分割を可能とし,結果的に2ページ埋め込みを構成することができる.平面以外の曲面でも,トーラス上の2部グラフはハミルトン閉路に類似するある種のグラフ構造を持ち,それにより効率的な本型埋め込みを構成することが可能となる. 今後の研究では,一般には非効率となるグラフの構造を取り上げ,それを解消するための条件をうまく設定する.そして,その条件下でグラフのページ数を下げる工夫を行いたいと考えている.特に,そのためにグラフの連結度を扱い,そのハミルトン閉路の存在やそれに近い構造を抽出し,グラフの辺集合の効率的な分解を考えたいと思っている. 特に,射影平面上のグラフについて,一般には9ページ埋め込み可能であることはすでに証明をしたが,5ー連結のものについては3ページ埋め込み可能,4ー連結のものは5ページ埋め込み可能であると予想している.そして,現在はその結果を得るための情報収集を行っている.トーラス上のグラフについての一般のページ数の上界「7」についても,連結度を上げることにより,いくらか改良できるのではないかと予想している.
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Causes of Carryover |
大学における用務のため,1回の海外出張を取りやめた.そのための旅費が余ってしまった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の夏季休暇を利用し,当初の予定よりも1回分多く海外出張を行う.
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Research Products
(8 results)