2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K04981
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
只木 孝太郎 中部大学, 工学部, 教授 (70407881)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アルゴリズム的ランダムネス / 量子力学 / 確率解釈 / 多世界解釈 / 典型性原理 / 確率概念の操作的特徴付け / Martin-Loefランダム性 / アルゴリズム的情報理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子力学では確率概念が本質的な役割を果たす。この確率概念は、波動関数の確率解釈(ボルン則)により量子力学に導入される。しかしながら、量子力学を記述する今日の数学において、確率論とは測度論のことであり、確率概念の操作的特徴付けは未だ確立されていない。その意味で、現在の形の量子力学は、本来操作主義的であるべき物理理論としては、不完全であると考えられる。本研究の目的は、アルゴリズム的ランダムネスの概念装置(Martin-Loefランダム性)に基いて、ボルン則を操作主義的に明確化した代替規則を提示し、量子力学の完全化を達成することである。 私は、本研究の先行研究により、測定結果が有限個の場合については、既にこの代替規則を確立している。本研究の目標の一つは、この有限個の場合の成果を拡張し、測定結果が可算無限個の場合について、ボルン則を操作主義的に明確化した代替規則を確立することである。 この目標を達成するためには、標本空間が可算無限集合となる一般の確率空間において、確率概念の操作的特徴付けを与える数学的枠組みを構築する必要がある。一方、標本空間が有限集合となる一般の確率空間においては、そのような数学的枠組みの構築は、私の先行研究により既に成功している。これが上述の測定結果が有限個の場合におけるボルン則の代替規則の確立に繋がったのである。 平成27年度は、はじめに、Martin-Loefランダム性の理論を、可算アルファベット上の一般の測度空間に拡張することに取り組んだ。するとこれが成功を収め、それにより、標本空間が可算無限集合の場合において、確率概念の操作的特徴付けを与えることに成功した。この成果に基いて、本研究の目標の一つである、測定結果が可算無限個の場合においてボルン則を操作主義的に明確化した代替規則を確立することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
測定結果が可算無限個の場合について、ボルン則を操作主義的に明確化した代替規則を確立することは、交付申請書に記載した「研究実施計画」においては、平成28年度末までに達成するべきことであった。これを、本研究の初年度である平成27年度において達成したのである。すなわち、本研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は次の2つである:(1)測定結果が可算無限個の場合においてボルン則を操作主義的に明確化した代替規則を確立する。(2)量子力学の多世界解釈では、ボルン則の導出が主たる課題となっているが、多世界解釈の立場から、(1)で提示したボルン則の代替規則の導出を行う。 (1)については既に目的を達成している。(2)について、この導出の議論で出発点として要請する原理(公理)が“典型性原理”である。これは、本研究の先行研究において、私が導入した物理原理(公理)であり、典型性原理を要請することにより、測定結果が有限個の場合においてボルン則を操作主義的に明確化した代替規則を、多世界解釈の観点から導出することに成功している。 今後の研究においては、この典型性原理を測定結果が可算無限個の場合に適切に拡張し、その拡張版の典型性原理を要請することにより、平成27年度に確立した、測定結果が可算無限個の場合においてボルン則を操作主義的に明確化した代替規則を導出する。 この拡張版の典型性原理が妥当か否かの評価は、特に、量子計算・量子情報理論でpartial traceやpurification等の概念が駆使される、混合状態における様々な状況を想定し、そのような状況で、測定結果が可算無限個の場合のボルン則の代替規則が、如何に自然に導出できるか、という観点で検討を行う。このようにして、拡張版の典型性原理のあるべき形式を決定する。 本研究の最終段階では、更に測定結果が非可算無限個の場合において、ボルン則の代替規則と典型性原理を如何に拡張するかについて検討を行う。そして、アルゴリズム的ランダムネスによる量子力学の再構成について、本研究後の具体的な研究計画を立案し、本研究成果の更なる発展への展望を得る。
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Causes of Carryover |
本研究の推進にあたっては、研究推進者である私が、如何に効率良く本研究の関連情報を収集し、本研究の着想を如何に拡充するかが重要な鍵となる。そのための主要な方法が、本研究に関連する国際会議・国内会議への参加である。参加に際しては、まず自身で発表を行い、それに関して他の研究者と討議を行い、同時に他の研究者により発表される様々な研究を聴講し、本研究の成就に繋がり得る情報収集を行うのである。 しかし、上述の通り、当初計画では平成28年度末までに達成すべきであったことを平成27年度に前倒しで達成してしまった。これにより状況は大幅に変わった。 国民の血税たる本助成金を有効利用するため、平成27年度の国際会議への参加は抑制した。これは、前倒しで得られた研究成果を大幅に拡充した上で、成果報告を兼ね、平成28年度以降に国際会議で発表した方が効率が良いと考えたからである。これが次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度以降において、平成27年度の研究成果を大幅に拡充した上で、成果報告を兼ね、これを国際会議・国内会議で発表し、本研究成果を大々的に宣伝する。次年度使用額はこのために使用する。 本研究を遂行するにあたっては、情報収集が肝要である。そのために、量子力学、特に量子計算・量子情報理論などに関連する様々な研究資料を確保する必要がある。これらの研究資料の購入・確保にも次年度使用額を使用する。
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Remarks |
上記webページのタイトルは「Research on Algorithmic Randomness and Its Extensions over Physics」である。(科研費電子申請システムにおける、webページの“タイトル”欄の入力文字数制限(50文字以内)により、ここに記す。)
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[Presentation] The principle of typicality2016
Author(s)
Kohtaro Tadaki
Organizer
Eleventh International Conference on Computability, Complexity and Randomness (CCR 2016)
Place of Presentation
The University of Hawai'i, Honolulu, USA
Year and Date
2016-01-08 – 2016-01-08
Int'l Joint Research
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