2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04992
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
石村 直之 中央大学, 商学部, 教授 (80212934)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | リスク管理 / 数理ファイナンス / 保険数理 / 最適化問題 / 伊藤の補題 / コピュラ |
Outline of Annual Research Achievements |
数理ファイナンスに現れる非線形偏微分方程式を研究するという課題のうち,今年度における主要な成果は,伝染病発生に関しての保険会社のリスク評価を行う数理モデルを提出し,それに基づいたリスクの解析的な評価を与えたことである。速報の論文は出版されたが,その後さらなる改良を加えたものが,国際的保険数理の会合であるASTINでの講演に採択された。伝染病発生を確率過程としてとらえ,もし発生した場合の最終的な患者の見積もりは応用解析学における知見を利用した。異なる研究領域にまたがるため,既存の研究はそれほど多くない。簡単なモデルではあるが,多くの注目を集め始めており,リスク管理への応用も期待できる。このモデルをさらに深めることにより,研究対象として興味深い非線形偏微分方程式を導出することを,次の目標としている。 もう一つの成果として,二つの異なる離散確率過程のもとでの最適投資問題について,最適化の条件を与えたことがある。導出の段階では,連続過程におけるよく知られている伊藤の補題を,異なる二つの離散過程がある場合に拡張し定式化した。数理ファイナンスからの例によると,使い勝手の良い公式となっていることが示された。今後,収束を解析し,それにより連続過程の場合の伊藤の補題が確かに得られることを示したい。それにより非線形偏微分方程式の解析の研究につなげられると期待される。 コピュラの研究では,コピュラの発展を為替相場の順位相関に応用した論文を執筆し,現在投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
伝染病発生に関する保険会社のリスク評価モデルでは,速報段階の論文ではあるが,注目を集めている成果を得た。離散過程の最適化問題では,よく知られている基本的な定理の拡張を行った。多くの研究がなされているコピュラの分野では,新しい概念であるコピュラの発展を実際のデータに応用し,その有用性を確認した。以上の理由により研究は順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的には,ここまでの研究の方向で問題ない。伝染病発生に関する保険会社のリスク管理モデルは,さらなる改善が必要であり,それにより使い勝手の良い標準モデルとなることも期待できる。最適投資問題では,収束性の証明と,それに付随して非線形偏微分方程式の導出が課題となる。コピュラの発展の研究では,さらなる応用可能性を追求する。いずれもここまでの研究の延長線上にあり,地道な研究を続ける必要がある。
|
Research Products
(3 results)