2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04998
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮寺 隆之 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50339123)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 量子測定 / 両立不可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は量子論における同時操作不可能性の背後に存在する数学的構造を明らかにすること、また同時操作不可能性から帰結される種々の原理的限界を調べることであった。これに関連し2018年度は計1本の論文と1本のプレプリントの出版を行った。 Journal of Mathematical Physics誌上で発表されたThe unavoidable information flow to environment in quantum measurements(量子測定における環境への不可避的な情報の流出)では以下の研究を行った。研究代表者はQualitative noise-disturbance relation for quantum measurements, T Heinosaari, T Miyadera, Physical Review A 88 (4), 042117 (2013)において、事後操作に基づいた順序を物理量空間とチャネル空間に導入し、それを用いることで情報攪乱定理の定量化によらない表現を見出している。そこで、最も大きな役割を果たしたのが、与えられた物理量と両立可能なチャネルの集合が一つの元から生成される主イデアルとしての構造を持つという事実であった。今回、この生成元のチャネルの構造を共著者のE.Haapasalo, T.Heinosaariとともに数学的に詳細に調べた。その結果、出力空間の次元の最小値は与えられた物理量(とある条件を満たす場合)における各成分の階数の和によって決まることが示された。これは、物理量がシャープでないときには、環境への情報の流れが不可避であることを示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学内における役職等があり時間は取られたが、それでも研究は順調に進展していると考えている。また両立不可能性を一つの元に対してだけではなく、部分集合に適用することによって、数学的に面白い構造が現れることがわかってきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
統一的な数理構造は(あるレベルにおいて)量子チャネルを扱うことにより得られることがこれまでの研究で明らかになった。さらに、両立可能性の問題を部分集合について、より一般的に扱うことにより、ガロア接続と呼ばれる構造が現れることが明らかになってきている。さらにこの構造によって自然に導入される閉包(closure)は、両立可能性とは全く異なるシミュレーション可能性における文脈から導入される閉包と関係があることがわかってきている。今後の研究としては、このガロア接続の構造をさらに体系的に調べることが大きな課題となる。また、より定量的な研究課題としては、量子チャネルにおけるcompatibility witnessの研究を行いたいと考えている。これは、近年、物理量について導入された同時測定に関するウィットネスの研究の、自然な一般化となることが予想される。さらに、両立可能性の概念を状態依存性のあるものに拡張することや、一般確率論などの広い枠組みを取り扱うことにより、量子論そのものの特徴づけを探ることなども行いたい。 また本研究課題の最終年度として、これまでの研究を包括するような論文を書くことも計画している。
|
Causes of Carryover |
共同研究者であったPaul Busch氏(ヨーク大学・英国)が6月に急逝したことが大きな理由としてあげられる。Busch氏は4月に1か月を超える期間にわたって日本に滞在し、その際に連日の議論を行った結果、新たな研究の方向性が見いだされ、その後の研究計画について話し合った。年度中に何度かの訪英と、招聘を予定していたが、それらが不可能となった。 また前年度からの繰り越し分も合わせて、次年度使用額が生じている。 次年度は研究会参加のための海外渡航(英国)と、共同研究のための海外渡航(フィンランド、エストニア)を予定している。また、何人かの関連研究者の招聘も行う予定である。
|
Research Products
(5 results)