2015 Fiscal Year Research-status Report
ボルテラ型積分変換を用いた無駄時間要素を含む発展方程式系の安定化に関する研究
Project/Area Number |
15K04999
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐野 英樹 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (70278737)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 放物型偏微分方程式系 / 移流拡散方程式系 / 安定化制御 / ロバスト制御 / 有限次元コントローラ / 剰余モードフィルタ / 安定半径 / 半群 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、はじめに、分布制御・分布観測の下でカップリングした放物型偏微分方程式系を取り上げ、それに対して有限次元のロバストコントローラを構成する手法を示した。ここでの放物型偏微分方程式系は、並流型熱交換プロセスをモデル化した、入口でディリクレ境界条件を有する移流拡散系であり、開ループ系そのものは指数安定である。Sano & Sakawa (1999年)において、単独の拡散方程式に対して剰余モードフィルタ(RMF)を用いた有限次元 H_∞コントローラの構成法を与えたが、ここでの結果は上述した放物型偏微分方程式系へ拡張するものである。したがって、この手法の利点は無限次元空間における作用素リカッチ方程式、あるいは高次の行列リカッチ方程式を解くことなしに、H_∞コントローラを構成することを可能にしている点にある。すなわち、低次の有限次元システムに対するH_∞制御問題に帰着される。キーポイントは制御スピルオーバ/観測スピルオーバを打ち消す、設計が容易なRMFを用いていることである。結果として、高次のRMFを用いることによって内部安定性が保証され、予め与えられた H_∞ノルム条件が満たされる。 つぎに、無限次元動的システムに対して有限次元安定化コントローラを設計する際に現れる安定半径の近似問題を取り上げた。安定半径の計算には、実現がヒルベルト空間における無限次元作用素によって記述される伝達関数の H_∞の値が必要になる。実用的な観点から、無限次元作用素を近似する有限次元作用素の族を用意し、それらの伝達関数の H_∞ノルムを計算する必要がある。しかしながら、それらが元の伝達関数の H_∞ノルムの値に収束するという保証はない。ここでは、その収束の正当性を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
入力無駄時間を含む場合は平成27年度に発表することができなかったが、「研究実績の概要」に記した結果は次年度以降の研究の基礎となるものである。この入力無駄時間を含む場合については、平成27年度に国際会議論文に投稿し、平成28年度に発表をアクセプトされている論文があるので、少し進捗が遅れているが、着実に成果をあげることができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、ノイマン境界制御の下での無駄時間要素を有する放物型偏微分方程式系を取り上げる。これについては先の結果(H. Sano, 2011年)を用いて、有界入力作用素を有する無駄時間システムとして定式化できる。したがって、基本的に平成27年度と同様のステップで研究を進めていくが、分数冪を用いた変数変換を行うため、強いノルムでの収束を示さなければならない。この点が分布入力の下でのシステムと大きく違うところである。
|
Causes of Carryover |
平成27年度に制御系設計用ソフトの購入を見送ったため、「次年度使用額」が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度よりも扱うシステムが難しくなるため、偏微分方程式論に関係する図書が必要であり、それに関する予算が3万円かかる。また、国内で研究成果を発表するために15万円、海外で研究成果を発表するために40万円、論文誌に投稿する際に10万円、文具類代として2万円程度の予算がかかることを見込んでいる。 なお、「次年度使用額」の合計欄(327,924円)は、平成27年度に購入を見送っていた制御系設計用のソフト代であるが、これについては平成28年度に購入予定である。
|