2016 Fiscal Year Research-status Report
ボルテラ型積分変換を用いた無駄時間要素を含む発展方程式系の安定化に関する研究
Project/Area Number |
15K04999
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐野 英樹 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (70278737)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 双曲型方程式系 / 無駄時間 / 輸送方程式 / ポート・ハミルトニアン法 / 熱拡散系 / 境界入力 / 安定化制御 / ボルテラ型積分変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、はじめに、境界フィードバックループに無駄時間要素を含む1階双曲型方程式系を取り上げ、ポート・ハミルトニアン法を用いて閉ループ系の指数安定性が保証される無駄時間の大きさについて考察した。この偏微分方程式系は向流型熱交換器のモデルとなるものであるが、元々、ループに無駄時間要素を含まない場合は、Kunimatsu & Sano (1998年)で Huang (1985年)の結果を用いて安定性解析していた。ただし、同手法を用いた解析は特性方程式が複雑になるため、フィードバックゲインが特別な値をもつ場合に限られていた。その後、Villegasら(2009年)によってポート・ハミルトニアン法に関する研究が進められ、ゲインに関する制約が緩和された。本研究では、ループに含まれる無駄時間要素を輸送方程式で表し、系全体を拡大1階双曲型方程式系で表すことにより、Villegasらの手法を用いることができ、指数安定性を保証する無駄時間の大きさが評価できた。さらに、並流型熱交換器を表す1階双曲型方程式系の場合も同様のアプローチが適用できることを示した。 つぎに、入力無駄時間を有する不安定な熱拡散系の安定化問題を取り上げた。Krsticら(2008年)は入力無駄時間を有する常微分方程式系に対して無駄時間要素を輸送方程式に置き換え、さらにボルテラ型積分変換を用いて predictor型の安定化制御器を構成したが、本研究では、その手法を分布入力をもつ熱拡散系に拡張した。特に、熱拡散系を関数空間で定式化し、ターゲットシステムを構成する際に部分極配置法を用いている点、放物型方程式および双曲型方程式の解を用いて制御則を構成している点が特徴となっている。さらに、ノイマン境界入力やディリクレ境界入力に無駄時間要素を含む場合に拡張し、それぞれ predictor型の安定化制御器を導出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、ディリクレ境界入力に無駄時間要素を含む場合の研究は平成29年度に予定していたが、思ったより順調に研究が進み、平成28年度後半に国内学会で発表することができた。平成29年度前半は、この結果に対する数値シミュレーションを行い、論文誌に投稿するつもりでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度前半は、ディリクレ境界入力に無駄時間要素を含む場合に対して数値シミュレーションを行い、論文誌に投稿するつもりでいる。平成29年度後半は、ロバン境界制御の下で入力無駄時間をもつ放物型偏微分方程式系に対して安定化問題を取り上げる。
|
Causes of Carryover |
平成28年度に制御系設計用ソフトの購入を見送ったため、「次年度使用額」が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度よりも扱うシステムが難しくなるため、偏微分方程式論、関数解析学に関係する図書が必要であり、それに関する予算が5万円かかる。また、国内で研究成果を発表するために15万円、海外で研究成果を発表するために40万円、論文誌に投稿する際に10万円の予算がかかることを見込んでいる。 なお、「次年度使用額」の合計欄(460,580円)は、平成28年度に購入を見送っていた制御系設計用のソフト代であるが、これについては平成29年度に購入予定である。
|