2016 Fiscal Year Research-status Report
人口の流出・集中を表す空間的進化ゲームの数理解析的・数値解析的研究
Project/Area Number |
15K05005
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
田畑 稔 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70207215)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江島 伸興 京都大学, 高大接続・入試センター, 特定教授 (20203630)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 進化ゲーム / 空間経済学 / リプリケーター方程式 / 非線型積分方程式 / 離散力学系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の目的は以下のプロセス①~③を実行することであった. ①(不変量方程式導出)非定常DSK modelの方程式系の両辺にprice indexをかけ,空間変数について積分して平準化する.これに定常DSK modelの研究業績の手法を適用し,数理統計学的不変量を解とする方程式を求める.②(不変量評価)①で求めたmaster 方程式の解に研究業績で開発した手法を適用して,不変量を評価する. ③(比較定理)人口密度・賃金密度と②で評価した数理統計学的不変量との関係を明らかにするため,数理統計学的手法を用いて比較定理を証明する. これら3つのプロセスは本年度にほぼ遂行することができた.特にこのプロセス①で計算する数理統計学的不変量は,賃金方程式の二重非線形積分作用素とその解作用素を含むreplicator方程式に対して高い親和性を有する.そのためプロセス①は二重非線形性が持つ,賃金密度を鋭敏に変化させる効果を,和らげる働きをする.さらに導出方程式のmaster 方程式(Chapman-Kolmogorov方程式)は賃金方程式やreplicator方程式そのものより,数段取り扱い易いことが知られていたが,本年度はこの評価に成功し,研究結果をDiscrete Dynamics in Nature and Society, Volume 2016 (2016), Article ID 4021516, 8 pages, doi: 10.1155/2016/4021516に発表した.この論文の結果により初期条件の微小変動に対する解作用素の過剰な不安定挙動が抑えられることを証明することができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロセス①不変量方程式導出,②不変量評価,③比較定理が本研究の実施プロセスであった.今年度までに,これら3つのプロセスのうち,②までの実施に成功した.特にプロセス①と②は偏微分積分方程式に関係する部分の研究の進み具合は非常に顕著であった.さらにプロセス③は数理統計学的不変量に関係する部分は2019年度実施予定であったが,その分を大幅に先取りして,実施することもできた.さらにプロセス②と③の両方に関係する数理統計学的不変量の取り扱いについても,数理統計学の定理としてまとめる目処が立った.このような理由から本年度研究は概ね順調に進展していると判断できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に証明した③の比較定理と②の不変量評価から,人口密度と賃金密度に対する評価を導出し,予想命題を証明する.通常の方法でシミュレーションを実行しようとすると,天文学的な数の初期値と移動コストの値の場合分けが必要である.そこで我々は予想命題を用いて挙動の分かっている場合を除外する.これにより本年度に行う数値計算の場合分けを大幅に減らすことを試みる.このシミュレーションにより,厚生労働省人口動態調査を基礎にして今後10年間の地方から大都市への流出人口を予測する.計算人口学(Computational Demography)では,計算機科学の様々な新しい手法を人口学に応用することにより,急激な人口移動現象も表すことができる精密な人口モデルが構築されている.本研究のシミュレーションでもこの方法も援用することにより,実証データとの整合性を高める.得られた結果は国内外の研究集会で報告し,研究成果を論文としてまとめて数理科学の学術誌に投稿する.また新しく解明された人口学的現象を人口学の学術誌に投稿する.得られる結果は数値解析学においても価値の高いものになると予想されるので,数値解析学やシミュレーション技法の論文として数値計算分野の学術誌に投稿することも考える. 研究が当初計画どおりに進まない場合は以下の対応を考えている. 1.実施予定のシミュレーションの規模を縮小する. 2.DSK modelを空間変数について球対称であると仮定して,変数の次元を下げることにより,評価を易しくして事態の打開を図ることも視野に入れる.
|
Causes of Carryover |
1.年度内に購入予定であった国際会議議事録(プロシーディングス, International Conference of Numerical Analysis and Applied Mathematics 2016 (ICNAAM 2016), 2016 SICASE International Conference on Applied Science and Engineering)の刊行が半年遅れて2017年8月になったため購入できなかった. 2.数値計算データ整理のためにアルバイトを雇用する予定だったが,アルバイトの確保が出来なかった.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由でのべた1については8月に購入予定である. 理由に述べた2についてはアルバイトが確保できたので,6月にデータ整理を開始する予定である.
|
Research Products
(1 results)