2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05008
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
野呂 正行 立教大学, 理学部, 教授 (50332755)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 和弘 立教大学, 理学部, 教授 (30333454)
篠原 直行 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワークセキュリティ研究所, 主任研究員 (70565986)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | グレブナー基底 / 有限体 / 暗号 / Wishart分布 / ホロノミック勾配法 / signature / 同種写像 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. signature をもとにグレブナー基底を高速計算するアルゴリズムである F5 アルゴリズムには, 計算の停止性の保証など, 不明な性質が多い. 本年度は有限体係数の多項式環について調査等を行った. 特に, F4 アルゴリズムに signature を導入して, 有限体に係数を持つ多変数多項式環におけるグレブナー基底を計算するアルゴリズムの調査, 実装及びその数値実験を行った. その結果, グレブナー基底が計算されているにもかかわらず, 計算の停止条件が満たされない例がいくつか存在した. 2. Wishart行列の累積分布関数の計算をホロノミック勾配法(HGM)により計算するアルゴリズムは、変数がいくつか異なる場合(対角領域)に適用できない。このような場合、分布関数が満たす微分方程式系を対角領域に制限することでHGMが適用できると期待されていたが、制限された微分方程式系の計算はこれまで8変数程度の場合にしか行えなかった。これに関し、グレブナー基底による1ステップの除算と極限計算を行うことにより簡約化ルールを機械的に生成し、それらを再帰的に用いることで、36変数までの場合ですべての対角領域パターンに対し制限された微分方程式系が原理的には計算できることが示せた。現状では実際に計算ができるのは20変数程度に限られるが、10変数程度までは高速に制限された方程式を求めることができる。さらにこれを用いて、従来シミュレーションでしか計算できなかった累積分布関数の値を高精度に求めることができることを示した。この結果は国際会議ISSAC2016に受理された。 3. グレブナー基底計算の高速化のためのモジュラー技法について、研究をすすめ、論文化を進めている。グレブナー基底を用いた楕円曲線の同種写像研究も、九大MI研安田准教授の助言を受け、共同研究の形で発展させ、論文化を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度当初に、目標の一つである、Wishart行列の分布関数の満たす微分方程式系を対角領域に制限する方法について、これまでの結果を大きく超えるサイズまで計算できるような新手法を発見した。この結果については部分的に前年度に開かれた研究集会で発表しており、早急に論文化する必要があったため、計算機実装まで年度内に終えて雑誌あるいは国際会議に投稿することを第一の目標とした。この結果は国際会議ISSAC2016に投稿し、2016年4月に受理されたが、結果として、グレブナー基底の高速計算に関する研究が必ずしも計画通りに進展しなかった。 また、F5のサーベイが予想以上に困難であり、F5に関する論文で示されているような高効率の実装を行うことにまだ成功していない。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. グレブナー基底計算の高速化については、F5の正当性検証および実装の効率化を、海外特別研究員として立教大学に滞在中のTristan Vacoon 氏の協力も得てできる限り進める。 2. Wishart分布に対して成功した微分方程式の制限計算は行列変数1F1の微分方程式についてのものであるが、これを、2F1にも適用することを試みる。さらに、得られた微分方程式を用いたHGMによる数値計算についても、27年度に得られた知見をもとに、より高速かつ実用的なソフトウェアを開発し公開する。 3. モジュラー技法のグレブナー基底計算の効率化への応用については、当初の計画に基づき、特に有理関数体上の計算の効率化を目指して研究を行う。 4. 同種写像の研究を完成させ論文を投稿する。
|
Causes of Carryover |
韓国での研究集会に出席を予定していたが、MERS感染拡大のためキャンセルしたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
カナダで開かれる国際会議への参加、および研究用図書、消耗品の購入に、当初予定の今年度分と合わせて使用する。
|
Research Products
(6 results)
-
-
-
-
-
[Presentation] グレブナー基底計算の効率化2015
Author(s)
横山和弘
Organizer
RIMS研究集会「数式処理研究の新たな発展」
Place of Presentation
京都大学数理解析研究所(京都府・京都市)
Year and Date
2015-08-19 – 2015-08-21
Invited
-