2016 Fiscal Year Research-status Report
破産理論を応用した統計的ソルベンシー評価の総合的研究
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15K05009
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
清水 泰隆 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70423085)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 保険数理 / 破産理論 / リスク管理 / 統計推測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は資産モデルの拡張とリスク評価の漸近理論に焦点を当てて研究を行った.通常,破産リスク量の評価には割引現在価値が用いられるため,資産モデルも金利変動の影響を受けると考えるのが自然である.このような要請に応えるには,資産モデルをレヴィ過程によって駆動されるOrnstein-Uhlenbeck型の確率微分方程式としてモデリングする必要がある. 本年実績として,このようなモデル下における資産のモーメント評価の具体的な計算方法を明らかとし,これらを用いた保険料計算を明示的な公式として示した.また,再保険リスク評価へと再保険料計算への応用についても明らかにした.更に,このようなモデルに対する統計推測法として,セミマルチンゲールノイズを持つような一般的な確率微分方程式モデルを考え,極限においてノイズが消滅するようなsmall-noise型の漸近理論の下での,ドリフトパラメータに関する最小二乗型推定量とその漸近的性質を明らかにした.この結果は,金利変動を加味した長期間保険リスクモデルのパラメータに関する統計推測手法を与えるものである.未だ,ドリフト項のみの推定であり,保険モデルへの実質的な応用には至っていないが,今後,ジャンプ項への推定へと手法を拡張し,保険モデルへの適用として意味のあるものにする必要がある. これらの研究と並行して,さまざまな変額年金に対する負債評価に関する研究も行った.変額年金リスクはクレームリスクのみでなく,ここの契約間で同一の投資資産の変動を考慮する必要があり,負債評価の際に個々の契約の独立性を仮定できず,古典的な大数の法則が利用できない.本研究では,経験過程の理論に基づき,集合的変額年金リスクの正規化極限が漸近正規することを示し,それをリスクの誤差評価へ応用した.これは今後の高次漸近理論への拡張を示唆するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデルの拡張は予定以上に進展したものの,その統計理論がやや制限的となっている.全体としては順調な進展と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
資産モデルとリスク評価については多くの進展があったので,今後は当初の予定どおり統計理論に重点をおいた研究を進めていきたい.また,海外の研究者と共同して,実データ解析ができるかどうかについても,そのデータの入手方法等も含め検討を進める.
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Causes of Carryover |
事務との連絡ミスによる
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度,消耗品として直ちに使用する予定.
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Research Products
(6 results)