2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05026
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加藤 万里子 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (50185873)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 新星 / 白色矮星 / 超新星 / 連星系の進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
私の研究分野は新星の理論とそれに関連する連星系の進化である。私が確立した新星風理論は、新星の光度曲線(極大から暗くなるまで)を計算することができる世界で唯一のものである。これまで、さまざまな違う特徴をもつ新星を理論的な視点から定量的に分類し、系統的に研究してきたが、今年度は特に回帰周期が非常に短い回帰新星を重点的に研究した。回帰新星の白色矮星は質量が非常に重く、チャンドラセカール質量に近いため、Ia型超新星の有力な親天体候補である。そこでまず回帰周期と不安的核融合反応の安定性の条件を求めた。また、爆発時の観測データから色色図上での進化について、新星のタイプによらない共通な道筋があることを発見し、回帰新星もそれに従うことを発見した。またアンドロメダ銀河に出た新星 M31N 2008-12a について内外の観測家と共同研究を行い理論面からの解析を行い、光度曲線を計算した。これらは回帰新星が超新星爆発に至る道筋を精密化するもので、今後の研究の発展のさらなる足掛かりとなる。
国内外の研究者とは議論や情報交換を積極的に行い、今後、さらに可視光・赤外線やX線の研究者たちとの共同研究をいろいろなタイプの新星についても広げるような体制を作ったことも大きな成果である。具体的には8月にイタリアのアジアゴ天文台に滞在し、Iijima教授らと新星の議論を深めたこと、9月にはパレルモで開催された「激変星と関連天体」の国際会議で新星理論のレビュー講演をし、各国の研究者と交流を深めた。10月にはなよろ天文台(北海道)で講演し新星の観測者と交流した。1月には新星の研究会を慶応大学で開催した。2月から3月にかけてはスペインのバルセロナ大学で新星のWSで講演し、Henze 博士らと共著論文の執筆の深くつっこんだ相談をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の第一の成果である色色図上の進化は、新星の理解を大きくすすめ、私の提案している新星風理論を観測的に支持する結果となっている。また質量降着する白色矮星表面での核反応の不安定性の理論的解明は、新星の白色矮星の質量がどのように増えていくかという連星系の進化にとって一歩前進であり、競合する外国の理論グループの理解が正しくないことも明らかにした。そして周期が非常に短い回帰新星 M31N 2008-12a)については、爆発周期が1年であり、毎年秋ごろに爆発するので、つねに進行形で観測と理論研究が進んでいる。昨年の爆発ではX線と紫外線の良質な観測データが得られたので、これまでになくいろいろな新しい視点から、理論モデルを構築中である。もっとも重要な課題である多波長の光度曲線作成についてはいまのところ、数値計算が難しい点があり、理論的な問題点を洗い出しつつ進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
アンドロメダ銀河の新星(M31N 2008-12a)については次回の爆発がいつ起こるかが関心の的になっており(周期が半年の可能性があるので)国際的な観測チームを作ってごく初期のX線や可視光の立ち上がりを観測できるよう計画している。もしこれが観測できれば新星の分野では画期的であり、理論的にも大きな手がかりになるので新しい進展が期待できる。可視光とX線の観測家との共同研究はほかの短周期新星も含めてさらに継続し発展させる。理論的な多波長光度曲線については斉尾氏との共同研究を継続しさらにいろいろな場合のテスト計算を経て完成させる計画である。
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