2015 Fiscal Year Research-status Report
偏波と輻射輸送に基づく星形成過程の研究:星間磁場の解明
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15K05032
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
富阪 幸治 国立天文台, 理論研究部, 教授 (70183879)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町田 正博 九州大学, 理学研究院, 准教授 (10402786)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 星間磁場 / 偏波 / 磁気流体力学 / フィラメント / 圧力平衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、Herschel衛星によるダスト熱輻射の観測から、 分子雲がフィラメント状の要素からなることが 知られるようになった(Menshchikovら2010)。 一方で、近赤外線領域の星間偏光の観測からは、 このフィラメントが星間磁場に垂直であることが示された(Sugitaniら2011)。観測に対応する、垂直な磁場によって支えられた等温ガスの平衡形状(重力と「磁場によるローレンツ力」、圧力、及び、 周囲の星間外圧の力学的釣り合い)を自己無撞着場の方法で計算し、重力に抗して支えられる 最大の線質量λmaxを得た(Tomisaka 2014)。 線質量が最大線質量以下のフィラメントに対して、予想されるダスト熱輻射の偏波構造、すなわち、星間磁場が連続波電波でどう観測されるかを調べた。熱輻射の偏波は星間磁場と垂直方向に星間ダストの長軸が整列していることによって生じる。 観測する方向による予測される偏波の違いを調べた。フィラメントの軸をz軸、大域的な磁場の方向をy軸、この2つに垂直な軸をx軸と呼び、z軸からの角度θとx軸からの角度φで指定される任意の方向(θ, φ)から観測した時の偏波構造を計算するプログラムを開発し、フィラメントの偏波構造の特徴を調べた。
2、磁場が星形成過程で与える影響を調べるために、非理想磁気流体力学シミュレーションを用いて分子雲コアの収縮と星・円盤の形成、またジェット・アウトフローの駆動について調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、任意の方向(θ,φ)から観測したダスト熱輻射の偏波構造を計算するプログラムを用いて、力学平衡にある垂直な磁場を持つフィラメントの偏波構造を調べた結果、観測方向とフィラメントの中心と表面の密度比によって、いくつかの特徴的な解が得られることがわかった。たとえば、θ=80度、φ=90度、 つまり、z方向に伸びるフィラメントのほぼ真横で、大局的な磁場Bの方向から観測した場合を見てみる。このとき、 (1) フィラメントの中心と表面の密度比が10倍程度の低密度フィラメントの場合、 一般に偏波は弱くなることが予想されたが、 (2) 密度比が300倍程度の高密度フィラメントの場合、磁場の方向から観測しているにもかかわらず、横向きに星間磁場が貫いているときの偏波構造を示すことがわかった。このことは、高密度フィラメントを考えることで、フィラメントの軸と星間磁場が垂直であるように見える観測例がたいへん多いことと対応している可能性がある。 2、平衡状態にある分子雲コアからの重力収縮過程を非理想磁気流体力学シミュレーションによって調べた結果、 (1) 円盤の形成過程には、磁場の散逸が重要な役割を果たすこと。 (2) 磁場の再増幅によって原始星近傍から非定常の高速ジェットが駆動することがわかった。 磁気流体力学とダスト熱輻射の偏波シミュレーションを組み合わせることで、星形成過程における磁場の役割を明らかにする研究の手がかりを得たと言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
非理想磁気流体力学シミュレーションとダスト熱輻射の偏波シミュレーションを車の両輪とし、(動的)計算で得られた磁場構造を観測される偏波構造に変換する道具立ての準備ができた。次年度、フィラメント状星間雲の動的収縮シミュレーションに取り組みその磁場進化および偏波構造進化を明らかにする事に取り組む。
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Causes of Carryover |
海外旅費(研究会参加)に使用を予定していたが、参加することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本来次年度に使用する予定であった分も会わせ、海外旅費(研究会参加)400千円、国内旅費(研究連絡)280千円、国内旅費(研究会開催)500千円、データ保管用ハードディスク120千円等に使用する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] ALMA Observations of the Transition from Infall Motion to Keplerian Rotation around the Late-phase Protostar TMC-1A2015
Author(s)
Aso, Yusuke; Aso, Yusuke; Ohashi, Nagayoshi; Saigo, Kazuya; Koyamatsu, Shin; Aikawa, Yuri; Hayashi, Masahiko; Machida, Masahiro N.; Saito, Masao; Takakuwa, Shigehisa; Tomida, Kengo; Tomisaka, Kohji; Yen, Hsi-Wei
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Journal Title
Astrophysical Journal
Volume: 812
Pages: 27 (20pp)
DOI
Peer Reviewed
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