2018 Fiscal Year Research-status Report
超高分解能3次元磁気流体シミュレーションによる大質量星形成過程の解明
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15K05039
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井上 剛志 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (90531294)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分子雲 / 磁気流体力学 / プラズマ不安定 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年までの3次元磁気流体シミュレーションによる研究の結果、単独の大質量星は、分子雲の高速衝突の結果として形成されることが明らかとなった。衝突させた分子雲の密度は300個/ccであり、衝突相対速度10km/s (マッハ数に換算して数十程度)の典型的な計算では、衝突で発生する衝撃波が分子雲を圧縮し、フィラメント状の高密度分子雲塊(密度~10,000個/cc)が形成された。このフィラメント状高密度雲は非常に大きな線質量をもっており(100太陽質量/pc)、重力的に不安定であるため、最終的に崩壊することで崩壊中心に大質量星が誕生する。この結果は観測される分子雲衝突による大質量形成シナリオと非常によく合致している。 今年度はこの成果をさらに進め、複数の大質量星がほぼ同時に誕生する大質量星団の形成過程に対する研究を行なった。近年の大マゼラン星雲に対する観測結果によれば、銀河同士の近接相互作用によって剥ぎ取られた中性水素ガスが、もう一方の銀河に高速で落下衝突することによって大質量星団の形成が誘起されている。そこで、3次元磁気流体シミュレーションを用いて、中性水素ガスの高速衝突シミュレーションを実行した。その結果、衝突によって磁気圧に支配された中性ガス圧縮層が生成され、それが自己重力分裂することによって、星団の種となりえる重力的に束縛された10,000太陽質量以上の大質量分子雲塊が形成されることが明らかとなった。現在、この成果を出版すべく論文執筆中である。 さらに、分子雲と相互作用する超新星残骸からのγ線放射に対する現実的なシミュレーションを行い、ガンマ線スペクトル指数の空間分布を見ることによって、分子雲と衝撃波の相互作用を検証することが可能であることを示した。この成果はThe Astrophysical Journal にInoue (2019)として出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大質量星団形成の研究に必要な3次元の自己重力を考慮した磁気流体シミュレーションコードの開発に成功し、プロダクトランにも成功した。結果は首尾よく観測を説明できるものとなり、次年度中にもその成果を出版できそうである。また、若い超新星残骸と相互作用する分子雲からのγ線放射に対する現実的なシミュレーションにも成功し、将来の観測に対する予言を行い、さらに成果を査読付欧文誌に出版することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は下記のような2つの異なるアプローチで個々の大質量星の形成と、大質量星団の形成に対する研究を進めていく。 i) 個々の(大質量)星形成に対する研究: Inoue & Fukui (2013) や Inoue et al. (2018) によるシミュレーション結果から、分子雲が強く圧縮されると重力的に不安定になりえる高密度分子雲フィラメントが生成される。Inoue et al.(2018)では、計算の空間分解能依存性等に関するパラメータ調査は行われているが、衝突する分子雲の密度、速度、磁場強度とその初期角度に対する形成されるフィラメントの性質については謎が残されている。もし、遅い衝突の場合に中小質量星を生むようなよく観測されているフィラメントが形成される場合には、大質量星から中小質量星に到るまでをシームレスに繋ぐ星形成理論の構築に繋げることができる。したがってまずは衝撃波が誘起するフィラメント形成の素過程について調査していく。 ii) 今年度の研究で第一歩が踏み出せたように、大質量星団は分子雲衝突よりも大規模な銀河スケールでのガス流衝突によって引き起こされている可能性が高い。今後は星団の種となる重力的に束縛された高密度分子雲塊が本当に衝撃波圧縮層の自己重力による分裂で生成されているのかや、銀河衝突等のパラメータレンジの異なるガス流衝突が発生した時に星団質量がどのように変化するのかを調査するのが必要になると考えられる。
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Causes of Carryover |
オーストリアで開催される国際会議で講演を行う予定であったが、同時期に業務上の理由で出張できなくなりキャンセルする必要が出た。そのため海外出張に必要であった金額が使用できなかった。また、国立天文台天文シミュレーションプロジェクトのスーパーコンピュータをメインの大規模計算機として利用したが、優先的に計算機資源を利用できるカテゴリB+ユーザーに採択されたため、40TBに及ぶデータストレージを無償で利用することができた。したがって、データの保存に必要なハードディスクを購入する必要がなく、資金を温存することにした。 来年度はすでに3件の海外で行われる国際会議での発表予定が入っており、さらに計算により出力されるデータ量は年々増加傾向にありデータストレージの増強が不可欠である。したがって、今年度利用できなかった資金を来年度に持ち越して利用することが必要になる。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Formation of the Active Star-forming Region LHA 120-N 44 Triggered by Tidally Driven Colliding H I Flows2019
Author(s)
Tsuge, Kisetsu; Sano, Hidetoshi; Tachihara, Kengo; Yozin, Cameron; Bekki, Kenji; Inoue, Tsuyoshi; Mizuno, Norikazu; Kawamura, Akiko; Onishi, Toshikazu; Fukui, Yasuo
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 871
Pages: 44-64
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Warm CO Gas Generated by Possible Turbulent Shocks in a Low-mass Star-forming Dense Core in Taurus2018
Author(s)
Tokuda, Kazuki; Onishi, Toshikazu; Saigo, Kazuya; Matsumoto, Tomoaki; Inoue, Tsuyoshi; Inutsuka, Shu-ichiro; Fukui, Yasuo; Machida, Masahiro N.; Tomida, Kengo; Hosokawa, Takashi; Kawamura, Akiko; Tachihara, Kengo
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 862
Pages: 8-22
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The formation of a Spitzer bubble RCW 79 triggered by a cloud-cloud collision2018
Author(s)
Ohama, Akio; Kohno, Mikito; Hasegawa, Keisuke; Torii, Kazufumi; Nishimura, Atsushi; Hattori, Yusuke; Hayakawa, Takahiro; Inoue, Tsuyoshi; Sano, Hidetoshi; Yamamoto, Hiroaki; Tachihara, Kengo; Fukui, Yasuo
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 70
Pages: S45-1,S45-21
DOI
Peer Reviewed
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