2016 Fiscal Year Research-status Report
解析および数値的手法を用いた行列模型による超弦理論の非摂動論的定式化の研究
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15K05046
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
土屋 麻人 静岡大学, 理学部, 教授 (20294150)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | IIB行列模型 / 非可換空間 / ファジー球面 / エンタングルメントエントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
超弦理論の非摂動論的定式化と期待されるIIB行列模型における赤外正則化の問題を研究した。フェルミオンの寄与を近似して簡単化したVDM模型において、赤外カットオフの入れ方に1つのパラメータを導入し、モンテカルロシミュレーションを行った。すると、パラメータのある範囲で結果が普遍的になり、かつカットオフの効果が無限体積極限で消えていく傾向を発見した。これにより、模型をどのように正則化して定義するべきかの指針が得られた。また、非可換空間の典型例であるファジー球面上のスカラー場の理論におけるエンタングルメントエントロピーをモンテカルロシミュレーションにより研究した。理論は行列模型により実現される。相互作用がない場合は、エンタングルメントエントロピーは着目する領域の境界の面積の2乗に比例することを見出した。これは行列による正則化を行っていることから理解できる。相互作用がある場合は、領域の体積を大きくしていくと、面積2乗則を積分して得られる一般化された体積則から面積2乗則への転移が観測された。これはファジー球面上では相互作用が非局所的であることから理解できる。このように、エンタングルメントエントロピーを求めることにより、系の重要な性質を抽出することができた。さらに、非可換空間上の場の理論が通常の場の理論とどれくらい異なるのかを知るために、ファジー球面上のスカラー場理論におけるくりこみを調べた。ブロッホコヒーレント状態を用いて、行列から場を定義し、球面上での場の2点相関関数と4点相関関数をモンテカルロシミュレーションで計算した。理論の1つのパラメータを微調整することにより、相関関数が理論の紫外カットオフである行列サイズに依らなくなることを見出した。これにより、この理論は通常の場の理論と同じ意味でくりこみ可能であることが強く示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IIB行列模型のダイナミクスのモンテカルロシミュレーションの研究は順調に進んでいる。行列模型における曲がった時空の記述については、平成28年度の量子エンタングルメント研究を参照しながら、平成29年度に研究を進めていけそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
IIB行列模型の大きな行列サイズでのモンテカルロシミュレーションを行うために、並列版のコードの開発を行う。これを用いて、まず赤外正則化に関して、近似なしの元の模型でも同様の普遍性が成り立つかを調べ、元の模型での正則化の仕方を確立する。それから、行列模型から得られる時空の構造を研究していきたい。ファジー球面上のスカラー場の理論においては、平成28年度における研究とは異なる極限をとったときに得られるより非可換性が強い理論において、同様なくりこみができるかを調べたい。ファジー球面上の量子エンタングルメントについては、相互情報量などの他の量が、通常の球面上における対応する量と比較して、どうような異なる振る舞いをするかを調べたい。また、群多様体上のラージN還元を拡張することにより、一般の多様体上のラージN還元を研究し、行列模型における曲がった時空の記述につなげたい。
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Causes of Carryover |
大学院生との共同研究が年度末に予想以上に進展したため、大学院生が学会で発表するための旅費を次年度にまわす必要があったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
申請者と共同研究者の大学院生が国外と国内の学会や研究会で研究成果を発表するための旅費に使用する。
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Research Products
(13 results)